東京都保健福祉局は3月9日、本年(2009年)冬季の路上生活者概数調査の結果を発表しました。
それによれば、都内の路上生活者数は3428名(23区内で3105名)との事で、23区内(国管轄河川敷を除く)調査は過去最低の2341名であり、地域生活移行支援事業等の自立支援システムの効果もあり目に見える路上生活者は一定数減り続けて来たこの間の傾向と合致するものです。
何度も繰り返して恐縮ですが、この調査は「調査方法等」にも記載してある通り「調査時間は昼間」であり、また、過去の調査からも目に見える路上生活者すなわち、公園、河川敷等でのダンボールハウス、テントハウスなど定住層を中心にカウントしたものであり、夜間だけダンボールハウスを作り寝るなどの移動層と呼ばれる人々はカウントされていないものです。が、故に「概数」でしかなく、この数字の「一人歩き」は実態とかけ離れた根拠となり得るので、実数と、概数調査の乖離はこの間、警鐘を鳴らして来たところです。
概数調査は実態と乖離している事を証明するため、本年はこの東京都の概数調査の時期とほぼ同時期(2月4日〜8日)新宿駅を中心に新宿区の路上生活者集住地域を私たちは独自に調査をしました。
但し、こちらの調査方法は「調査時期は夜間から早朝」です。
東京都概数調査(新宿区)昼 | 新宿連絡会数調査(新宿区)夜間から早朝 | 誤差 |
299 | 598 | 299 |
その結果は見事に倍増です。同時期、新宿区も独自に夜間実態調査に入っており、その結果も区内600名前後という結論に達しています。
新宿の特徴として中央公園、戸山公園のテントハウスなど定住層が地域生活移行支援事業などにより減少しており、その代わり夜間だけ新宿駅周辺で身体を休める移動層の仲間がその大半を占める(公園を除いて新宿駅周辺では今回の調査では329名もカウントしている)と云う状況変化があり、この事を考慮せず、従前のよう昼間のみの調査だけでは全体像が捉えられなくなっています。この傾向は各地においても地域生活移行支援事業後の大きな特徴であり、実態を更に掴むためにも、昼間の調査と同様に、夜間の調査も参考値として実施すべきであろうと考えます。
他方、新宿の実例だけをもって、東京都の数値を倍増すれば実数に近くなると云う訳でもないでしょう。地域ごとの特性があるとは思われますが、主要なターミナル駅を持つ特別区、また山谷圏を抱える台東区などでは、夜間に同様の調査をすればこの概数調査の数とはかけ離れた数字がおそらく出ることでしょう。
尤も、私たちに言われるまでもなく、国の予算において巡回相談などをやっているのであるからして、もっと実態に沿った数値を東京都は都民に提供すべきでしょう。