ホームレス自立支援法の 
        再延長を!

 

  私たちはホームレス生活を余儀なくされた仲間への支援を、仲間同士の連帯で行なっている団体です。

 私たちは、お情けの支援ではなく、助け合いの支援を23年間、新宿の地で仲間と共に続けています。
 バブル崩壊、金融危機、果てまたリーマンショックと、激動の歴史の中、リストラ、終身雇用の崩壊、派遣労働の増大や労働力政策の失政などに影響され、社会の下積みの労働者が、守るべきものをいとも簡単に壊され、そして、野宿を余儀なくされる過程を私たちは見続けてきました。
 都市部において地代は異常に高く、安住する家すら持てない、または手放さざるを得ない人々が多く出現しています。その結果、マンションから木造アパート、アパートから木賃宿、サウナやカプセルホテルから路上へと、収入に比例して生活水準は堕ちていきます。
 そして、繁華街の近くで、雑収入や、行政、民間の応急援護などに頼る生活が固定してきます。深夜の都会で生活を営む人も、テント暮らしを選択する人も出てきます。河川敷で自活できる人は仮小屋を作り、生きていかざるを得ません。
 ホームレスでなくとも、再就職の度に条件が落ちていくのは、この国の雇用環境です。
 ホームレスの平均年齢は50代半ば。中高年齢者の再雇用と安定は、よほどの経験がなければ困難な道のりで、需要のある肉体労働では、身体がついていかなくなる年齢でもあります。生活に希望がなければ、その意欲すら減退してしまうのは、ある意味、致し方がないかも知れません。
 そうなってしまった慢性的な病気を持つ人は生活保護の道を選びます。しかし、重篤な病気でなければ、まだ働けると思うのが労働者として生きて来た人々の思いです。生活保護制度は非常に窮屈な制度(が、故に最後のセーフティネットとして存在している)で、それを知っているが故に、ホームレスの人々がすべてそれに吸収されることはありません。
 働こうとする人々は大勢います。けれど、それに見合う制度や仕組みが構築されていなければ、ホームレス者はこれ以上、減ることはないでしょう。働き方が見つからない人々は、都市に、繁華街に、そして路上に彷徨するしかないのが悲しい現実でもあります。
 しかし、それが固定されないよう、自立支援センターやシェルターを中心にする路上から脱却する階段、そして仕事につながるツール、社会福祉につながるツール、そして、どんな事情があってもホームレスにしない、もしホームレスになってしまったら、すぐさまそこから脱却できる施策は、社会が全体の意思として有り続けるべきです。少なくともホームレス者がゼロになっていないのであれば、それは継続すべきです。

 大都市が抱える問題は、その自治体に任せきり、根拠となる法律がある内は良いが、根拠法がなくなれば、あとは知らんふり。ホームレス自立支援法が失効されれば、そうなることでしょう。国は何の責任ももたなくなるでしょう。

 「生活困窮者自立支援法」と云う相対的貧困問題をカバーしようとする法律がつい最近出来、そこにホームレス問題を吸収させようと云う考え方があります。しかし、実務的には、「はいはい、ホームレスですか、それじゃ、これと、これと書類を持って来て下さい、審査も時間がかかりますから、それまで自分で何とかして下さいね」これが「生活困窮者自立支援法」の現場です。
 住居を喪失しそうな人々を主たる対象にして、現に「衣食住」の問題が絶対的に不足している人々をほとんど対象にしていない法の性格上、最初からこう云う構造になるのですが、その点をつかれると、厚生労働省は「そうならないよう見直す」と言います。けれど、そんな常套句をそのまま信じる、お人好しはいませんし、一度作られた法体系と、作られた利害関係を見直すことがどれだけ大変なことかを知らない人はいないでしょう。
 一部の反対意見があった「生活困窮者自立支援法」を今さら修正しようとしても、それはそれで遠い道のりです。
 全会派が賛成した今ある法律で、路上から脱却する階段を、しっかりと作っているのであれば、その効果を更に浸透させるためにも、それをまずは再延長させるのが筋と思うのです。ホームレス自立支援法で実施されている施策の実効性は、誰が見ても明らかです。
 
 国会議員の先生方も、15年前、先輩議員の方々が、「票」にもならないこの法律を作るためどれだけ努力、調整したかに想像を及ぼすべきでしょう。誰も何もしなければ失効するだけです。その先の展望もなく失効させ、現場を混乱させたとしても、あまりメリットもありません。
 東京オリンピックもあります。その時、ホームレス問題をどうするのでしょうか?その時、その解決のための根拠法や、国、自治体、民間団体の連携すらなければ、国際的に恥をかいてしまうかも知れません。

 ホームレス状態と言う苦境に国民を陥れない。もしそうなったら、すぐさまそこからの脱却を支援していく地域を都市部を中心に作っていく。これは、特定の誰のためでもない、国民の健康で文化的な生活を希求する政治の課題であろうかと思います。

 私たちは、当事者の意志として、ホームレス自立支援法の延長を求めます。

 皆様方のご理解、ご協力をお願い致します。

                                     (2017年4月)

                       新宿連絡会
                        
                             東京都新宿区高田馬場2-6-10-106 電話03-6826-7802
                             メ−ル shinjuku@tokyohomeless.com