野宿のおじさん達が病気になった時が一番困る。私達が活動をする前は病院にもいけず、路上で亡くなる仲間も多かった。
 7年前から私達は福祉事務所を介して病院に紹介し、病気の方が無料で入院や通院が出来、治療に専念できる環境つくりをめざして活動をしています。
 毎週月曜日は福祉事務所で待ち合わせをした病気や高齢のおじさん達と一緒に福祉事務所と交渉する福祉行動を欠かさず行なっています。

 おっと、大事な活動を忘れていた。
 炊出し、パトロール、医療相談に並ぶ連絡会の長年に亘るワンパターン定期活動、福祉行動をである。
 新宿区への福祉行動は今をさかのぼること8年前、94年の確か3月頃から始めている。
 福祉行動とは、病気の仲間や高齢の仲間など生活保護申請が必要な仲間と一緒に福祉事務所に出向き、生活保護を獲得していく付き添い活動であり、今や全国の支援団体が同様な行動を行っている定番の行動である。何故一人じゃ、生活保護の申請が出来ないかって?それはこの国の福祉行政の在り方に係わる問題でとてもこの欄では説明できない。難しい話はさて置き、困った時はお互い様の精神で、仲間が病気の仲間を背負って「俺はいいが、このおっちゃんに福祉をかけてくれ!苦しんでるんだ!」ってのが、福祉行動の原形。野宿すら出来そうにもない仲間を放っておくには路上の義理人情がすたる。てな訳で一人じゃ不安そうな仲間を手助けするのが人の道。もちろん「よけいなお世話」と言う人には情報を提供するに留まり、一人で行ってもらう。そこら辺はシビアに人を見て判断をする。恩着せがましいことはしないのが連絡会である。
 福祉事務所に着いたら、相談カードに名前を書いてもらい窓口に提出。じっと順番を待つ。新宿区役所の福祉事務所は個室もあるが、基本的にはオープンスタイルの相談。名前を呼ばれたら脇に座ったり、後ろで腕組みしながら相談をきちんと見守る。もちろん相談同席は本人の依頼。プライベートな話の秘守義務はとにかく守る。そうやって、ようやく申請書に名前を書いたら保護申請完了。ご当人が病院に行く時には帰りをじっと待つ。よほど心配な人以外は病院にまでは同行しない。あくまで福祉申請の支援であり医者の判断にいちゃもんはつけないのが原則である。
 昔は処遇決定に関して窓口での職員との「やり合い」がかなりあったが、時代が進むにつれ「やり合い」も少なくなった。こちらが折れた訳ではなく、新宿福祉がまともになったからである。もちろん、話がややこしくなったり、制度面の問題になったりすると交渉権を発動。課長、係長などとフォーマルな形で「やり合う」。
 今では、緊急一時保護センターの入所受付だけとなったが、各種寮の入寮受付の日にも必ず立ちあう。運命の別れ時である抽選時に不適切な対応がないかどうかを監視するためだが、新宿福祉も馴れたもので混乱などはなく、今では第三者の立ちあいという性格に留まっている。
 福祉を身近に!が、連絡会の目指すものである。生活保護というとマイナスイメージが先行して困っているのになかなか行こうとしない人々も多い。そんな仲間には「働いていた頃は高い税金払ってたんだから、ちょっとの間だけ返してもらおうよ」と粘り強く説得。「権利」だ「権利」だと言ったって、そんな一朝一夕に権利意識など生れはしない。そして、生活保護制度など決して万能でもなんでもない。福祉に甘えることなく、自立のための足がかりにさえしてくれれば良いだけの話である。
 そんなこんなで路上にとって福祉が身近になるまでこの行動は続くだろう。

(連絡会MEWS 31号より)