ホームレスの実態調査報告が公表されました。
 4月6日、厚生労働省 社会・援護局地域福祉課はホームレスの実態に関する全国調査報告書を公表しました。報告書全文はこちら
 
この調査は「ホームレス自立支援法」施行後5年を経ようとしている中で、施策の評価等を行い、法及び基本方針をより実態に即し、実効性あるものに見直すため実施されたものです。
 そのため、概数の把握のみならず、全国規模でサンプル数を定め、詳細なアンケート調査を行い、全体の生活実態等の実態も明らかにされています。
 この報告書を元にした具体的な分析は、現在進行中と思われるので、厚労省のコメントは公表されていませんが、ホームレス数は15年調査に比して約26%減少したものの、現在もホームレス状態を強いられている人々の状態は4年前に比してほとんど改善はされておらず、むしろ悪化している数値(年齢が1.6歳上昇、路上生活期間5年以上の者が約24%から約41%に上昇、身体に不調を訴えている者が約48%から50%に上昇、きちんと仕事をしたいと望む者が約49%から約35%に減る等)が多く見受けられます。
 マスコミを含めてどうしても減少の数値のみに目が行きがちですが、ここ数年、法に基づき全国規模で国及び地方自治体が数多くの施策を打っている事、また地方格差はあるものの、景気、及び雇用情勢が比較的安定している現状からして、4年前と同一方法での調査での数値が減るのはある意味妥当であり、逆に減少数がこの程度の規模では、余り褒められたものではないかも知れません。まだまだ地方自治体での温度差が高く、施策にもばらつきが多く、全体として本腰をあげて自立のための施策を実施したとはとうてい云えない数値でしょう。
 また、4年前との違いでは、今日「見えないホームレス」が「ネットカフェ難民」や「ワーキングプア」問題で多く注目されており、都会においては雇用が一時期より増えたものの、ホームレス状態ぎりぎりの人々の層を増やしているのではとの指摘もあります。「自立支援法」は「ホームレスとなる恐れのある者」も包摂されている事から今回実施されていないこの点での概数、実態把握作業が課題とも言えます。「見えるホームレス」だけではなく、「見えにくいホームレス」をどう把握し、同時に施策を打っていかない限り、法の目的は達成できないと考えます。
 そして、課題となるのは、施策が現状の実態にまだまだ即していない。また、その宣伝作業も不十分であると云う点です。今回調査で明らかになった就労意欲の低下や現状維持希望の上昇は、施策がありながら、それを知らない、また知っていても利用したがらないと云う、施策上の問題の反映であると考えます。大都市圏で云えば自立支援センターと云う箱物のみに、常雇い再就職支援を集中させた結果、施策が限定的にしか効果を生まず、多様なニーズにマッチングしていない現状も生まれています。その結果、施策の魅力が減じ、知っていながらも利用しない層が形成されてしまっています。就労支援の時間のかけかたも含めて、多様な仕事のあり方、多様な自立のあり方について議論をしていく必要があるかと考えます。その上で、巡回相談等、施策の存在をしっかりと告知し、窓口等も拠点相談等柔軟に配置すべきと考えます。
 そして、今回のアンケートの今後の施策希望の項目で「居住の確保の支援」希望が一番多い事をどう認識するのか。国レベルではほとんど手をつけてこなかった、住宅問題へのアプローチをどう方向づけるのかが、大きな課題として横たわっています。
 これらの議論はすでに全国規模の民間支援団体の議題にのぼっており、今回の実態調査結果に基づき、民間サイドの提言も準備されています。
 いずれにせよ、今回の見直し問題は、今後を5年間を占う大きな問題であり、ここ数年で悪化し続けているホームレス者の状態を更に悪化させ続けるのか、それとも施策のスピードや規模も含めて残り5年にラストスパートをかけるのか否かが問われています。
 連絡会としても、「ホームレス自立支援法」制定のために培って来た全国的なネットワークを更に強化し、全国的な民間支援運動の基本方針見直し議論と提言、そして、その実行のための全国行動に積極的に参加していきたいと考えます。