ホームレス自立支援法衆議院通過!傍聴行動もたたかう!

 7月17日午後、衆議院厚生労働委員会において「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案」が自民、保守、公明、民主、社民の5会派共同の委員長提出法案として提出され、全会派一致で採択されました。同時に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件」(委員会決議)も可決され、衆議院本会議に送られました。
 翌18日、午後、衆議院本会議の場でも全会派一致で同法案は採択され、参議院厚生労働委員会に送られる事となりました。
 17日は新宿、池袋、釜ケ崎の当事者、支援者約40名が議員会館前に集合し、議員会館前での情宣、座り込みを行いながら、午前、午後と交代で傍聴を行い、仲間の求め続けて来た法案の行方を見守りました。18日の本会議にも5名が代表して傍聴、衆議院での同法案通過の瞬間を確認してまいりました。
 他方、参議院厚生労働委員会は宮路副大臣の辞任問題で予定外の紛糾が続いており、参議院での同法案の取り扱いが微妙な情勢へと至っています。
 しかし、疑惑問題、有事法制問題などで混迷が続いていた今国会の終盤、最後の最後まで諦めなかった関係議員の努力によって、ついに衆議院を通過した事により、同法案の制定は時間の問題となっております。法案制定を求めてきた全国の仲間と共に喜びたいと思います。
 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案」は、いわゆる与党三党案そのものですが、国の責務を明確にさせるという点では昨年6月に提出されていた民主党案をベースにしたものであり、基本内容は同一です。また、新に付け加えられ、私たちも含めて支援団体やマスコミ各紙が懸念表明をしていた第十一条のいわゆる「適正化条項」については、同日採択された委員会決議文で「第十一条規定の通り、法令の規定に基づき、公共の用に供する施設の管理者が当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に充分に配慮すること」と法の運用段階において歯止めがかけられる事となりました。「国際約束」とは、これまで日本政府が批准してきた国連人権規約などでの諸決議「強制立ち退きの禁止」なども含まれると解釈されるからです。委員会決議文は本法案の不十分な部分を補う内容が多く盛り込まれており、実際の法の運用段階においても反映させるべきだと考えます。政府ー地方自治体もこの法案を提起した委員会の意向をまったく無視することはできないだろうと思いますし、無視をさせないよう関係機関へ今後強く働きかけをしていく必要があると考えます。
 
 参議院での取り扱いは微妙な情勢になりつつありますが、結果的にどうなろうとも31日今国会の最終日に、私たちは関係議員の方々と共に院内集会を開き、同法案をいかに現場に生かしていくのかを考えていくような前向きな姿勢で歴史的な第一歩を踏み出したいと考えます。

衆議院厚生労働委員会決議文

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件

 政府及び地方公共団体は、我が国においてホームレスの急増が、看過できない極めて大きな問題となっている現状を踏まえ、ホームレスを含め社会的に排除された人々の市民権を回復し再び社会に参入することができるようにすることは、憲法第十一条及び第二十五条の精神を体現するために必要不可欠な施策であることに深く留意し、本法の施行に当たっては、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 
一 ホームレスの自立の支援に際しては、自立に至る経路や自立のあり方について、可能な限り個々のホームレスに配慮した多様な形が認められるよう努めること。
二 ホームレスに対する職業能力開発に当たっては、ホームレスの実情に応じた内容となることに深く留意するとともに、ホームレスの自立につながる安定就労の場の確保に努めること。
三 ホームレスに対する住宅支援策の実施に当たっては、その実効性を高めるため、地域の実情を踏まえつつ、公営住宅・民間住宅を通じた可能な限り多様な施策の展開を図ること。
四 ホームレスが入居する施設においては、入居者本人の人権尊重と尊厳の確保に万全を尽くすこと。
五 第十一条規定の通り、法令の規定に基づき、公共の用に供する施設の管理者が当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に充分に配慮すること。
六 本法による自立支援策と生活保護法の運用との密接な連携に配慮し、不当に生活保護が不適用とされることのないよう、適正な運用に努めること。
七 第十四条に規定する全国調査を早期に完了し、遅滞無く事業を実施すること。
八 本法を施行する中で実情との不整合等が生じたとき等においては、速やかに見直すこと。
九 「実施計画」を策定しない都道府県及び市町村の区域においても、ホームレスの自立支援及び余儀なくホームレスとなることの防止の諸施策の実施に可能な限り努めること。

右決議する。

平成十四年七月十七日

衆議院で採択された法案全文)

   ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案
目次
 第一章 総則(第一条—第七条)
 第二章 基本方針及び実施計画(第八条・第九条)
 第三章 財政上の措置等(第十条・第十一条)
 第四章 民間団体の能力の活用等(第十二条—第十四条)
 附則

第一章 総則
 (目的)
第一条 この法律は、自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在し、健康で文化的な生活を送ることができないでいるとともに、地域社会とのあつれきが生じつつある現状にかんがみ、ホームレスの自立の支援、ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関し、国等の果たすべき責務を明らかにするとともに、ホームレスの人権に配慮し、かつ、地域社会の理解と協力を得つつ、必要な施策を講ずることにより、ホームレスに関する問題の解決に資することを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。
 (ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標等)
第三条 ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標は、次に掲げる事項とする。
 一 自立の意思があるホームレスに対し、安定した雇用の場の確保、職業能力の開発等による就業の機会の確保、住宅への入居の支援等による安定した居住の場所の確保並びに健康診断、医療の提供等による保健及び医療の確保に関する施策並びに生活に関する相談及び指導を実施することにより、これらの者を自立させること。
 二 ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われる、これらの者に対する就業の機会の確保、生活に関する相談及び指導の実施その他の生活上の支援により、これらの者がホームレスとなることを防止すること。
 三 前二号に掲げるもののほか、宿泊場所の一時的な提供、日常生活の需要を満たすために必要な物品の支給その他の緊急に行うべき援助、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による保護の実施、国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護、地域における生活環境の改善及び安全の確保等により、ホームレスに関する問題の解決を図ること。
2 ホームレスの自立の支援等に関する施策については、ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要であることに留意しつつ、前項の目標に従って総合的に推進されなければならない。
 (ホームレスの自立への努力)
第四条 ホームレスは、その自立を支援するための国及び地方公共団体の施策を活用すること等により、自らの自立に努めるものとする。
 (国の責務)
第五条 国は、第三条第一項各号に掲げる事項につき、総合的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。
 (地方公共団体の責務)
第六条 地方公共団体は、第三条第一項各号に掲げる事項につき、当該地方公共団体におけるホームレスに関する問題の実情に応じた施策を策定し、及びこれを実施するものとする。
 (国民の協力)
第七条 国民は、ホームレスに関する問題について理解を深めるとともに、地域社会において、国及び地方公共団体が実施する施策に協力すること等により、ホームレスの自立の支援等に努めるものとする。
 

第二章 基本方針及び実施計画
 (基本方針)
第八条 厚生労働大臣及び国土交通大臣は、第十四条の規定による全国調査を踏まえ、ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定しなければならない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について策定するものとする。
 一 ホームレスの就業の機会の確保、安定した居住の場所の確保、保健及び医療の確保並びに生活に関する相談及び指導に関する事項
 二 ホームレス自立支援事業(ホームレスに対し、一定期間宿泊場所を提供した上、健康診断、身元の確認並びに生活に関する相談及び指導を行うとともに、就業の相談及びあっせん等を行うことにより、その自立を支援する事業をいう。)その他のホームレスの個々の事情に対応したその自立を総合的に支援する事業の実施に関する事項
 三 ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われるこれらの者に対する生活上の支援に関する事項
 四 ホームレスに対し緊急に行うべき援助に関する事項、生活保護法による保護の実施に関する事項、ホームレスの人権の擁護に関する事項並びに地域における生活環境の改善及び安全の確保に関する事項
 五 ホームレスの自立の支援等を行う民間団体との連携に関する事項
 六 前各号に掲げるもののほか、ホームレスの自立の支援等に関する基本的な事項
3 厚生労働大臣及び国土交通大臣は、基本方針を策定しようとするときは、総務大臣その他関係行政機関の長と協議しなければならない。
 (実施計画)
第九条 都道府県は、ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するため必要があると認められるときは、基本方針に即し、当該施策を実施するための計画を策定しなければならない。
2 前項の計画を策定した都道府県の区域内の市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するため必要があると認めるときは、基本方針及び同項の計画に即し、当該施策を実施するための計画を策定しなければならない。
3 都道府県又は市町村は、第一項又は前項の計画を策定するに当たっては、地域住民及びホームレスの自立の支援等を行う民間団体の意見を聴くように努めるものとする。

第三章 財政上の措置等
 (財政上の措置等)
第十条 国は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を推進するため、その区域内にホームレスが多数存在する地方公共団体及びホームレスの自立の支援等を行う民間団体を支援するための財政上の措置その他必要な措置を講ずるように努めなければならない。
 (公共の用に供する施設の適正な利用の確保)
第十一条 都市公園その他の公共の用に供する施設を管理する者は、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。

第四章 民間団体の能力の活用等
 (民間団体の能力の活用等)
第十二条 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を実施するに当たっては、ホームレスの自立の支援等について民間団体が果たしている役割の重要性に留意し、これらの団体との緊密な連携の確保に努めるとともに、その能力の積極的な活用を図るものとする。
 (国及び地方公共団体の連携)
第十三条 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を実施するに当たっては、相互の緊密な連携の確保に努めるものとする。
 (ホームレスの実態に関する全国調査)
第十四条 国は、ホームレスの自立の支援等に関する施策の策定及び実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、ホームレスの実態に関する全国調査を行わなければならない。

附 則
 (施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
 (この法律の失効)
第二条 この法律は、この法律の施行の日から起算して十年を経過した日に、その効力を失う。
 (検討)
第三条 この法律の規定については、この法律の施行後五年を目途として、その施行の状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

(7月17日国会前行動のチラシ)

ホームレス自立支援法制定へ!
衆議院厚生労働委員会で与野党合意の委員長提案法案として本日可決の見通し。
31日参議院本会議で制定予定。良心的議員と全国の路上の仲間の力がついに国を動かす!
31日「勝利集会」へ!

 私たちは都内各地で野宿者を支援しているNGO団体の実行委員会です。
 私たちは厚生労働省の調べでも全国2万4千を越しているホームレス問題の深刻化を鑑み、国が責務として野宿者の就労支援、住宅確保支援、予防策を講ずるよう全国のNPO、NGO団体と共に国会への訴えを昨年来行い続けて来ました。
 私たちの訴え、そしてこの問題を深刻な人権問題として捉える少数の与野党議員の方々の尽力により、ようやく「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案」(10年間の時限立法)がまとまり、本日衆議院厚生労働委員会において採択される見通しとなりました。
 この法律案は自立の意欲がありながらも野宿をせざるを得ない人々に対し、国が責務として、緊急的な援護や生活保護の実施、就労支援、住宅確保支援など野宿から脱せれるような自立支援策を全国的に実施し、ホームレス者や民間支援団体などと共にホームレス問題の社会的解決を目指そうとするものです。また、ホームレスになる事を防止する施策も同時に行なう事も義務付けられており、広い意味での生活に困窮した失業者や貧困者を法の対象として網羅し、国民からホームレス者を生みださない社会を目指した社会保障法です。
 一部今後の課題となるような不十分な点も残されてはいますが、我が国初のホームレス自立支援法としては、万人が納得する妥当な内容で確定された事を私たちはおおいに評価するものです。
 もちろんいろいろな政治色や立場から全国すべての野宿者支援団体がこの法案を評価しているものではないようです。中には「治安管理のための法」だ「有事法制と同質の法」と規定し「ホームレス法案粉砕」を掲げ、野宿者を政治利用しようとする団体もいます。
 私たちにとっては、一人ひとりの野宿者がいかに自立を果たせるのかこそが重要な問題です。穿った政治主張をしている暇はありません。人の生死がかかっているからです。そして間違いなくそのための一助になるであろうこの法案を評価し、野宿の仲間と共に積極的に推進して来ました。
 私たちは野宿者の自立のための法制定が、単なる政治のアリバイにならないためにも、今後、この法に実効性のある血と肉をつけていく事に最大限尽力を尽くさなければならないだろうと考えています。
 そしてそのためにも今月31日、参議院本会議で本法案が正式に制定される日に議員会館内で「勝利集会」を行い、この法をいかに活用し、実効性のあるものにしていくのかを、全国の野宿の仲間、そして法制定に奔走して下さった議員の方々と共に考えていきたいと思います。
 法制定をホームレス問題の社会的解決に向けた一里塚に必ずやしていきましょう。