2002年春の都区「路上生活者対策」の改善を求める取り組みが始動!

5月1日360名の仲間が新宿に集まり第8回新宿メーデーをたたかい、
第2回都庁福祉局交渉を行いました。

 5月1日、第8回新宿メーデー(呼びかけ・新宿連絡会、主催・同実行委)が新宿柏木公園で計360名(新宿連絡会は250名の動員)の参加で行われました。
 メーデー集会では新宿連絡会、池袋連絡会など参加5団体が運動報告と決意表明。団結がんばろうの拳を元気よく掲げた後は都庁に向けてのデモ行進。8回目ともなると、新宿の街行く人々も見慣れた光景のよう。
 都庁前では、新宿連絡会、池袋連絡会、三多摩野宿者ネットの合同部隊による代表団を福祉局に送り込む。この春第二回目となる交渉の議題は「自立支援事業の改善」。代表団の中には自立支援センターに入寮している仲間、自立支援センターにかつて入寮したが失敗をして路上に戻らざるを得なかった仲間が参加。入寮期間の問題、就労対策、住宅対策の不備など具体的な問題点を提起、東京都サイドではこれらの問題提起を受け、自立支援法案制定を見通して産業労働局、住宅局との検討を行っている事を披歴。リピーター(失敗者のやり直し)問題も含めて前向きに検討していくとの言質を勝ち取りました。また、三多摩における自立支援事業の開始についても強く要請をしていきました。
 中央公園での総括集会では、野宿者人権資料センター、いけとも、連絡会医療班などからの発言を受け、法案制定の日まで、そして対策が拡充される日まで頑張ろうと確認しあいました。
メーデー雑感

笠井和明

 第8回新宿メーデーが終わった。
 新緑の季節、私たちは毎年、新宿の街を抜け、都庁、そして中央公園へと仲間と共に闊歩する。この日だけは新宿の街は野宿者をのけ者にしない。堂々と仲間はその時々の要求を掲げ、拳をあげる。

 第8回メーデーは全体結集で360名。第4回メーデー以降は都内の野宿者運動団体が一同に会するメーデーとして開催し続けて来た。日頃は交流もない各団体が一同に会するという意義、すなわち「俺たちは決して一人母っちじゃない」という事を互いに確認しあう場としての意義はもちろんある。その事は否定しないつもりである。
 が、各団体の運動路線があまりにもかけ離れた時、そういう効果というのは逆作用をもたらす事もある。
 今年のメーデーは全体としてまとまっているかのように装ったものの、実質的には分裂メーデーであった。法案問題に関する相反する主張を書いた横断幕を掲げ、第一梯団(新宿連絡会、池袋連絡会、三多摩ネット)と第二梯団(のじれん、山谷争議団とこれらの支援者)は決して合流する事なくまるで別のデモ隊のように行進した。都庁福祉局交渉も新宿連絡会系の部分だけが行った。ある人がデモ隊を見て「大人のデモ隊と子供のデモ隊」と称したよう、その印象の差は明らかだったようだ。

 この印象をどう整理したらよいのか。以下のように考えるのが良いようである。
 
 野宿者運動を「反体制運動」に変質させようとする部分(活動家)がいる。おそらくじょじょに作られつつあるこれらの潮流の台頭が、この間の都内および全国における運動団体の分裂の要因なのであろう。
 東京でいえば「のじれん」なる団体がそうなのであるが、20数名たらずの彼らの部隊は今回の新宿メーデーでは「法案反対」の横断幕を掲げてデモに参加してきた。新宿の仲間達はせせら笑ったり、憤慨したりしていたが、彼らの法案反対の理由はもっともらしく「排除につながる」からであるようである。が、彼らが民主党案を支持し、「適正化」条項が加わった与党案に反対しているのかと思えばそうでは決してなく、民主党案にも「反対」なのである。これは法案問題に対して真摯にたたかって来た人々からすれば、まさに嘲笑以外の何ものでもなく、結局のところ与党案だから「反対」しているに過ぎない事が見え見えでなのある。一言で言えば筋が通っていないのである。しかも更にたちが悪いのは、法案が必要でないというのなら現行法で対策を講じろと主張するのでもなく、またこれらの政策要求すらまともに出しえず、自らの主張をベールに包んでいる点である。こういう部分はもちろん賢明な野宿者には支持されるものではないが、論争をしうる論点すら出さないから尚更悪質と言えるだろう。
 こういう傾向は大阪においても顕著のようである。「釜ケ崎炊出しの会」なる団体は「自立支援法案は治安維持を目的とした保安処分である」なる(時代錯誤的な)主張を行い「釜が先医療連」などと共闘しながら法案の反対運動を行っているようである。彼らは反体制的な気分をもった人々の危機感に訴えるのには長けているのかも知れないが、法案のどこをどう読んだら治安維持法案になるのかを、もっと明確に指摘すべきであろう。しかもこういう主張を知ってか知らずか、社民党の国民生活部会において披歴する場を提供するとは、社民党も社民党である(かつて政権与党にいた時にホームレス対策を政策として行わず事態を混迷させた責任も感じす、今の今になって「排除が問題だ」と言っても、誰も信用などはしないであろう)。
 これらの人々は、民主党案も支持しないし与党案も支持しない、ならばホームレス問題をどう政治的、政策的に「決着」させる気なのだろうか?反体制的にこれらの法案を「粉砕」し、その後、一体どういう風に野宿者の自立の支援をするというのだろうか?「排除」はいけないと言うのなら、「排除」ではなく一体どのように「ホームレス問題」を「解決」しようとするのだろうか?是非ともその絵図(壮大な革命の夢)を見せてもらいたいものである。

 活動家の思想信条が「反体制」でも別に構わない。そういう人々はそういう政治活動をやれば良い。が、彼らの「反体制」意識をいかにも総ての野宿者が支持しているかのよう振る舞うものだから、事はおかしくなる。

 私たちは評論家的、マスコミ的、学者的にではなく、実際に強制排除と身体を張ってたたかって来たし、強制排除されても尚たたかい続けて来た。だから排除の恐れがあるから与党案は悪いなどと今更鬼の首を取ったように主張するものでもない。不備ある法案が出来たとしても私たちは今更何も恐れもしないし、私たちはどうなろうとも、どこでだろうとやり直しの出来る社会に向けてたたかい続けるだけである。ピーター少年よろしく排除の恐れを強調しなくとも仲間達は肌身で社会の冷たさは常日頃から感じている事である。いかにやり直しが出来る社会にするのか、いかに自立支援を官民共同で行えるようするのか、現行の弱肉強食社会をいかに少しでも変革していくのかが、今最も問われている事をまともに考えずに「体制」に反対すれば事足りるという、幼稚な考えで野宿者を利用しないで頂きたいと願うだけである。活動家諸氏は「反体制」で自己満足に浸れるのだろうが、当の野宿者は先に見えない展望の井戸の中に放りこまれるだけである。

 メーデーに参加して、そんな事を思った。

 私たちは良識のある大人の行動を続けるだけである。