新宿での地域生活移行支援地行はいよいよ終盤
 7月1日、新宿における「地域生活移行支援事業」がようやく開始され、以降順調に仲間のアパート移行が進められています。11月初頭段階で中央公園、戸山公園の仲間130名が移行、当初計画では12月末まででしたが来年1月まで事業が延長され、トータルで250名前後の仲間が移行を済ませる予定です。

 アパート移行に伴い、都立公園などの「臨時就労斡旋」も9月より開始、当面の生活再建と再就職のための資金稼ぎと位置づけ、多くの仲間が毎日汗を流して働いています。

 この事業は当初「公園からの排除計画」であるとの批判もありましたが、連絡会としては「利用するしないは当事者が決める」と「選択権の保障」を強く要望し、交渉の結果、「選択権の尊重」を大原則とする事が確認されました。そうは言っても事業が開始されるとどうしても「事業の勧誘」になってしまう傾向については、両公園とも民間団体が直接の窓口になる事で防止させています。また、事業対象者もテント生活者のみとせず、両「公園で起居している者」と幅を広げさせ、昼間公園のベンチや芝生で寝ている仲間も対象にさせる事に成功しました。

 また、路上コミュニティ破壊、団結破壊であるとの批判もある中、連絡会は公園に残る仲間もアパートに移る仲間も、「同じ仲間」であるとし、アパート移行組を対象にした「新宿連絡会やねの会」を結成、これまでの路上の仲間の団結を維持していくと同時に、新たな団結形態の枠組みを形成しました。「やねの会」は現在、会員を募っている段階ですが、国会請願行動への参加を皮切りに、越年越冬闘争でのボランティア部隊としての形成、そして「事業」に対する改善要望を来春に向けて準備をしています。とりわけ2年後のアパート「更新」問題の早期決着(7月説明会段階では2年後の更新問題のツメは検討中との回答)、そして都営住宅枠の確保(当初計画では謳われていながら住宅局との調整がつかず現在棚上げになっている問題)を目指して行きたいと思っています。

 他方、「臨時就労」は半年間限定であり、かつ今年度は緊急地域雇用創出特別交付金事業で賄われています。全体として雇用対策枠の継続を求めると同時に、半年後の生活設計を、「常用労働」「パート労働」「日雇労働」「雜業自営」「半福祉半福祉」「福祉」等の多様なコースを作り、可能な限り自前でアパートを確保し続けられる展望を切り開かなければなりません。連絡会としてもNPO新宿就労支援センター(無料職業紹介所)や働きたいみんなのネットワーク(無料職業紹介所)等と協力し再就職支援、職業開拓、福祉行動等で全面的にバックアップしていくつもりです。既に連絡会経由の求人が自立支援センターで活用されている例があり、この分野での蓄積とチャレンジが仲間の生活を支える大きな武器になる筈です。

 仲間が低家賃アパートを確保したと云う小さな出来事が、全ての仲間の可能性の扉を大きく切り開いたと私たちは確信しています。仲間との信頼関係がある限り、この事業は必ず成功します。  今後、地域生活移行支援事業は12月から隅田公園、来年度、上野公園、代々木公園へと対象地域を推移させて行きます。この事業を生かすも殺すも、支援団体と仲間との関係、そして支援団体の発想の豊かさにあると考えます。

 「走り続けて来た」新宿の実例を他地域では誰が引き継ぐのか?注目をしていきたいと思います。

 もちろん、今回この事業に参加しなかった仲間も多くいます。新宿の仲間では鼻から断った仲間は少なく、皆、悩み抜き、様々な人と相談をし「苦渋の決断」をし抜いた者ばかりです。とりわけ「新宿区内」のアパート確保が予想より困難を極めた事の影響が指摘されていますが、それも含めそれぞれがそれぞれの事情を抱えている現状で「決断」に時間がかかる仲間も少なくありません。今回事業に乗らなかった仲間を非難する権利は誰にもありません。排除はもちろん私たちがさせません。石原知事が公言した「追い出し条例」などもっての外であり、この動きが本格化するならば私たちは身体を張ってでも阻止します。

 私たちは地域生活移行支援事業をグレードアップさせ、再度新宿の地で実施する事をこれから要求していきます。駅周辺の仲間、小公園にいる仲間は今回の事業の対象外でした。そんな仲間も含め、新宿から何度でもやり直せる「屋根と仕事」につながる施策を必ずや拡大させます。

(連絡会NEWS39号より)