2002年3月14.15日

東京都福祉局連絡調整担当部長 殿
特別区人事厚生事務組合 厚生部長 殿
路上生活者対策事業運営協議会 殿

「路上生活者対策」の拡充に関する要望書


新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議(新宿連絡会)
池袋野宿者連絡会

090-3818-3450(笠井)

 
 平素から「路上生活者対策」の推進にご尽力頂き感謝しております。昨年末からの緊急一時保護センター・大田寮の設置、そして本年3月の自立支援センター墨田寮の開設と、着実に「ホームレス白書」にもとづく今年度事業が前進している事は大変心強く思います。
 今後とも自立支援センター渋谷寮の新設、グループホーム事業の開始を早急に実施し、更なる「対策」の前進に資するよう重ねて要望致します。

 さて、自立支援センター開設から1年と4ヶ月、緊急一時保護センター開設から3ヶ月が経ち、ようやく「ホームレス白書」にもとづく「一貫した、社会復帰・自立支援システム」が試みられる段となりました。私たちもステップアップ方式による社会復帰、自立支援システムを高く評価し、期待をもって本事業が成功されるよう、昨年7月27日付『今後の「路上生活者対策」推進に関する要望書』の提案、保証人提供民間事業体の立ち上げ、各寮受付など「対策」情報の路上生活者への提供、寮の外部からの面会、相談事業などを行なってきました。
 が、全体として施設設置などハード面の整備が進む一方、ソフト面においては、私たちが危惧した通り、現在かなりの混乱が生じていると判断せざるを得ません。グループホーム事業など未実施な施策もあり、「完成」されたシステムではないという事を差し置いても、肝心の入り口部分(緊急一時保護センター)から自立支援センターへとステップアップさせる実務すら効率的に行えないようでは、先が危ぶまれます。
 私たちは「路上生活者対策」をより当事者のニーズに則し、当事者が活用しやすく、より効果的、効率的に行えるようにするため様々な建設的な要望、提言を今回再びさせて頂きます。

 私たちが路上生活者対策に関して特段に注意をしている点は、当事者が「利用しやすいか、否か」という点、そして、事業が当事者の自立に「役に立つか、たたないか」という点にあります。
 この観点からこれまでの事業を評価するなれば、大田寮から自立支援センターへのステップアップ方式による新たな自立支援システムは、まだまだ「利用しにくく」かつ「役に立つ部分は制限されている」と評価せざるを得ません。その観点から改善の要望を以下の5点に絞り提言したいと存じます。

1)緊急一時保護センター入寮方法の改善と利用対象者選別の厳守について

 一般的に言って、特定の事業やサービスを受けに路上から福祉事務所などの窓口に自ら赴く時には、おのずからそのサービスへの「理解」を伴い、かつ「期待」を持ってそこへ赴きます。とりわけ路上生活者をしながら自立を願う人々にっとってみれば尚更の事です。現行の路上生活者対策が自立支援センターへの入所希望者(就労意欲のある人々)も原則的には緊急一時保護センター経由でステップアップしなければならない関係上、緊急一時保護センターへの入所受付日に自立への意欲と新たなサービスに期待を持った人々が殺到するのはやむを得ない事態と言えると考えます。新宿区などは自らが持つ入所枠と希望者の数との比率が大きくかけ離れる区においては、「抽選」という入所方法で希望者を選別せざるを得ない状況が続いています。他方、台東区など、ややもすれば野宿を固定化させる質をもった「法外援護」、「高齢者特別就労事業」が無計画に垂れ流されている(山谷対策)地域、区においては、路上生活者対策と山谷対策の区別と関連がはっきりせず、利用者にもそれを説明できない状況下で、相対的に路上生活者対策諸事業に対しての需要は少ない(過去の統計などを見ても)状況となっています。施策上の混乱を起因としながらいわゆる「東西格差」が端的に顕現されている現状ですが、全体として緊急一時保護センターに対して需要があるという事は、その事業に対する「理解」「期待」があると解釈すべきであり、順番としては、「理解」ある人々を優先的に入寮させるというのは、事業の円滑な運用の観点からも当然の措置であると私たちは考えます。緊急一時保護センターが強制的に入寮させるという性格の施設ではなく、社会復帰・自立支援システムの入り口という位置づけであり、自己申告による入寮がベースとなる以上、尚更です。需要がある区の路上生活者が、23区の「悪しき平等主義」(需要という観点を無視した概数調査による機械的な平等主義)による各区当初「枠割り」により、他の区の入寮希望者よりも長く路上で待機させられ、また結果的に需要のない区に回らなくてはならないという入り口の設定はかなり無理があるという事がこの間の各区の入寮状況を見ても明らかだろうと考えます。もちろん私たちは都区共同の事業である以上、各区の枠を一律にとっぱらえと主張する訳ではありません。需要および利用実績、他施策(山谷対策)との重複度合などを勘案し、入寮希望者の期待にある程度まで応えられるよう、再度入り口枠を各区の実績や実情を考慮しながら見直し、かつ柔軟な調整が可能なように改善すべきと考えます。「対策」の重要な入口部分においては、需要に則さない機械的な枠な分配、もしくは(上野一時保護所のような)「早いもの順」などという偶然性に託すのではなく、各区の実情に合わせた入寮の仕方と、調整の仕方を混乱のないよう改善すべきです。
 また、福祉事務所によっては「事業実施細目」に反し、明確に生活保護該当者と思われる者を緊急一時保護センターに入寮させ、保護施設の代替施設として活用している例が目立ちます。各区枠の順守がこのように本来的に用途以外で達成されている事態は看過できません。各区において、新たな自立支援システムに対する利用対象者の振り分けを厳格に行い、かつ現在の需要を調査し、それにもとづき毎月の利用者数の確定と、中長期的にわたる需要の掘り起こしを計画するくらいの「路上生活者対策」への理解と発想が必要かと思われます。大田寮の空きがあるからと利用対象者以外の者をとにかく入所させるという安易な考え方に立つべきではありません。保護決定するまでの間の「待機施設」という言い訳を該当区はしているようですが、これなどは「事業実施細目」の拡大解釈以外に他ならず、路上生活者対策の無理解と言う他ありません。私たちが指摘するまでもなく生活保護対象者についての居宅保護推進対策は平成6年の都区検討会「福祉対策を中心とする緊急対策と中長期対策」で明記されているものであり、それに基づき、緊急一時保護センターを利用することなく進めていくべきであり、保護決定までの「待機者」は本来業務の中でのいわゆる「法外宿泊」で対処すべきです。保護を決定するか否かは各福祉事務所窓口の管轄であり、その業務の一部を緊急一時保護センター内の相談業務に肩代わりさせる姿勢は断固戒めるべきであろうと考えます。

2)緊急一時保護センター内相談体制の再確立と自立支援センター各区枠の撤廃について

 緊急一時保護センターのアセスメントを終了したものの内、現在46%前後の人々が自立支援センターに入所している通り、路上生活者の人々の就労意欲と自立支援策への期待度は高いものとなっています。この期待度の高さの認定を数値上では間違えた(設計ミス)としか考えられない初期設定の計画のもとで現在実務は進んでおり、緊急一時保護センター内でのアセスの「待機待ち」、アセス後の自立支援センター入所「待機待ち」と、入り口施設段階において入寮者の希望に即さない運用が強行されています。大田寮の施設長も利用者との「交渉」(3月12日)において「(回転について)徐々に改善されてはいるものの、決して満足できる状態ではない」と明言しており、いわゆる「糞詰まり」状況は深刻な事態へと至っています。それが十全な相談を実施した結果の「待機待ち」というのならまだしも、相談体制と相談実務は私たちが要望してきた充実したものとは遠くかけ離れ、かつ「事業実施細目」の業務項目から見ても「粗雑」と言わざるを得ないようなものに成り下がっています。「細目」に予定されている入寮後の一週間目における生活相談すらなく、3週間目、4週間目になって始めて1回目相談が入る、相談があったとしても自ら進んで相談にさえ行けないものとなっており、利用者の側からは強い不満の声があがっています。相談体制の充実は火急の課題だと考えます。委託した民間団体が職員を確保できないというのなら、東京都や福祉事務所から職員を出向させてでも改善すべきです。相談が円滑にいかないこと(回転が悪いこと)を主たる原因として、各区の募集人員も回を重ねる毎に少なくなり、多くの入所希望者もまた路上での「待機待ち」をさせられています。これを放置しておけば、路上生活者の固定化、そして当事者からする行政不信感の増幅と悪循環的構造がまん延してしまうと予想されます。
 もとより「走りながら考える」(前東京都福祉局連絡担当部長中村氏の談)質をもった路上生活者対策であるので、設計ミスなども含めて躍起する事は予想の範囲であると考えますが、問題はそれを是正しようとする意志が希薄でかつ、是正の対応が極めて遅い事にあると考えます。
 また、緊急一時保護センターから自立支援センターへとアセスされる比率は、各区の緊急一時保護センター枠と比例をすると考えるのが不自然で、様々な各区事情などによってまだら模様になる筈です。けれども、何故だか未だに自立支援センターの各区枠が存在し、かつ指定された自立支援センター以外は基本的に利用できないとされています。これでは尚更回転が悪くなるだけです。昨年11月の路上生活者対策事業運営協議会で確定された「自立支援センターの利用方法について」は、その是正の第一歩なのでしょうが、緊急事態(在所率の低下×三ヶ月)への対応レベルでしかなく全体の回転率をあげるには至っていません。
 まずは、自立支援センターの各区枠は全廃し、かつ、各区が指定された施設以外の利用も積極的に認めるようにすべきです。東にある台東寮、墨田寮は規模が大きく、西にある新宿寮、豊島寮は比較すれば規模が小さい。しかし、東は山谷対策と路上生活者対策が二重化している区が多く、路上生活者対策への期待度、需要が少ない。この矛盾を解消する手段を早急に持つべきだろうと考えます。
 大田寮で「細目」通りの相談体制の再確立をはかり、相談「待機待ち」を減少させ、かつ自立支援センターへの転寮を制度的によりスムーズにしていく事により転寮「待機待ち」を減少させる事、この事を中心に、より効率的に使える施設へと緊急一時保護センター・大田寮を改善すべきであります。

3)自立支援センターの事業内容の改善に関して

 もちろんそれらを是正した程度で「対策」全体の回転率の悪さの大幅な改善は期待できません。なにしろ計算上は需要に応えるだけの枠数を自立支援センターが有していないからです。が、だからと言って、期待している人々のニーズをむやみに制限する訳にもいきません。入り口を狭め、制限する事は路上生活者対策の推進にとってみれば対策の後退であり、路上生活者の現状を固定化させるだけの結果にしかなりません。入り口に即した(すなわち今年度については、月に一回300名の利用対象者を入寮させるという前提に立ち、計画的に路上生活者を減少させる)システムを再構築していかなければならないと考えます。もちろんその場合、今後緊急一時保護センターの増設と歩調をあわせながら、自立支援センターを更に増設させる事も視野に入れなければならないと考えます。たとえ遅れている渋谷寮が来年度に設置されたとしても自立支援センター5カ所の全体枠が400名前後ならば、増え続ける緊急一時保護センターからの需要に間に合いません。早急に自立支援センターの増枠を計画する必要があると考えます。私たちは国の法整備を見通しながら、来年度以降の事業計画を見直す事、その計画の中で、一貫したシステムをすべて備えた恒久的な路上生活者対策施設を実験的にでも一ヶ所設置するよう提案したいと思います。
 もちろん当面は現在の枠内で自立支援事業を推進しなければならない訳ですので、現下の当面の課題は、いかに自立支援センターでの回転率を高くするかという点であります。
 私たちはこの一年有余行われて来た自立支援センター内における自立支援事業は個別台東寮を除けば、おおむね順当に行われて来たと高く評価しております。とりわけ職安OBによる就職相談員による指導は頼もしいものがあり、就職率は今時の不況下の中においても驚異的とも言える数値を表しています。利用者の意欲と事業主体側の意欲が有効にマッチしていると判断できるだろうと考えます。
 私たちは、緊急一時保護センターで就職活動以外の諸問題は既に解消ないしは解消へのプログラミングが終わって、自立支援センターに入所した者は住民登録を済ませ、すぐにでも就職活動に就ける者と判断します。この条件が整わない事には自立支援センターの事業も効果的に進まず、結果回転も遅くなります。
 この前提に立つならば、求職期間は利用開始後8週間内で可能かと考えられますし、もし8週間を過ぎても就職が未決定者の者は、グループホーム事業、もしくは保護施設などで生活保護を一時的にでも適用し、長期の就職活動に専念させるべきでしょう。この事を全体のシステムの中で明確にすべきと考えます。「実施要綱」でいえば、第9の2項を厳格に判定し運用していくとの事となります。
 更に通勤での就職決定者に対し、かつての暫定自立支援事業と同じよう特人厚宿泊所への転居を勧め将来的に都営住宅への入居を視野に入れられる選択肢を確立すべきと考えます。すでに「実施細目」にあっては「宿泊所・公営住宅への入居手続き等に関する支援」は住宅相談員の業務内容として確立しているのですから、あとは政策的に就職決定者が入居できる宿泊所・公営住宅を確保するだけの話しであります。一口に通勤での就職決定者と言っても、個々においては、就労形態が不安定であったり、賃金もまたかなりの差が出ています。これらの条件を勘案せずに一律、就職決定後最長2ヶ月の内に退所、転宅、自立というプログラムを強いる事にはかなりの無理があると考えます。その事が就職決定率に比して自立率が低くなっている大きな原因ではないのでしょうか。就職決定後からの「自立」までへのゴールラインをもっと多岐にわたり作る必要があると考えます。もちろん、通勤しながら社会生活を訓練していく、金銭管理を指導していくなどの面はあるでしょうが、実際のところ、就職決定後の生活相談はほとんど行われていません。就職決定後、どのくらいの期間目標で、どのような地域で、どのような居住形態で就労自立を目標とするのかについて利用者と真摯に話しあう場が必要かと考えます。その目標さえ確認されるのなら、なにも自立支援センター内から通勤せずともその目標の実現は可能かと考えます。もちろん当初の期間内で貯蓄をして民間住宅に転居したいと考える利用者には旧来通りのプログラムを維持し、他方、初給料を貰った段階ですぐにでも転居したいと望むものには、転居費用をすべて貸し付けるなどの新たな制度を設ける、また、低賃金、不安定故に宿泊所・公営住宅など低家賃住宅に入居して生活を建て直したいと考える利用者にはそれらの宿泊所への転居を勧める、社会復帰に向けての訓練などが必要な利用者にはグループホーム事業を勧める、また、それ以外でも通勤施設をたとえばアパートを借り上げ家賃補助を一定期間行いながら運営するなどの新たな住宅確保システム構築も必要かと考えます。就職決定後の出口問題は民間賃貸住宅市場に任せるという発想から脱却し、より政策的に考えていかなければならない大きな課題であると考えます。
 自立支援プログラムについては、就職決定後の住宅確保策をいかに多岐にわたり作りだして行くのかを重点的に考え、現行の制度をその観点から改善していかねばならないと考えます。その結果として、全体のシステムをより効率的に回転させていくべきです。
 
4)グループホーム事業について

 新年度からグループホーム事業が開始されるとの事ですが、この事業に関しては、昨年7月27日付『今後の「路上生活者対策」推進に関する要望書』において展開した通り、自立支援センターからの就労未決定者に限定する事なく、「半福祉、半就労」自立スタイルの確立を大きな目標に掲げて頂きたく存じます。以下、『要望書』を再掲します。

『また、自立支援センターで就労に結びつかなかった人々や、パート・アルバイト的な収入の少ない仕事しか見つからなかった人々などは、共同生活の中で自立をめざそうとするグループホームでの支援という形をもつべきだろうと考えます。まずは、グループホームをそのように位置付け、各地に複数設置する方向性を確立して頂きたいと存じます。こちら自立の仕方は、能力に応じての仕事をやりながら、収入不足を福祉援護や年金支給などで補いながら地域社会の中での自立を目指すという方向性を持つべきでしょう。生活保護から(主要には病気をきっかけに)半福祉、半就労での地域社会の中での自立というコースは保護施設などで指導していますが、自立支援事業から半福祉、半就労での地域社会の中での自立というコースは今の所ありません。自立支援センターは成功するか失敗するかの二者択一でしかありませんし、福祉事務所も失敗した人々の生保での救済をやろうともしません。全面的な保護か、全面的な就労自立かしかの選択肢がない状態では、自ずから「出口」の地点でその他の人々は再び路上へと振り落とされてしまいます。とりわけ比較的高齢でフルタイムでの就労が困難な(かつ生活保護の対象にならないような)人々を取りこぼすようなら自立支援事業は本来の意味で成立していかないと思います。また、自力での就労確保が困難な人々に対しては限定的にも公的就労を提供するなど特別の手当てが必要かと考えます。自立支援関連施設のメンテナンスや周辺の清掃、食堂などでのアルバイト等、何らかの手段で雇用が確保される方策を考え出して行く必要があると考えます。』

5)各施設や各実施機関などの連携について

 生活保護適用にせよ、緊急一時保護センターにせよ、自立支援センターにせよ、またこれから出来るグループホーム事業にせよ、これらは一貫した路上生活者対策の体系の中で行われているという事を福祉事務所や施設運営主体や委託先事業はもっと自覚をすべきであろうと考えます。緊急一時保護センターの相談業務が遅滞し充実していないのは委託先の人員不足と見通しの甘さが原因とも言われています。これは一委託先個別の問題ですが、その事によって全体の路上生活者対策の推進もまた遅滞する関係にあります。同じように福祉事務所が生活保護対象者を大田寮に保護施設の代替施設として利用する。これもまた福祉事務所の個別の事情や体制の問題ですが、これによって全体の路上生活者対策の推進が遅れたり、混乱したりする。しかも、実施主体たる特人厚や東京都は事業への全体的視点を持たずに、個別の問題を寛大に容認し、放置し続けている。これでは言葉にいう「一貫した自立支援システム」などは絵に書いた餅にしかならなず、せっかく作った諸施設も効率的に運用すら出来ないでしょう。「走りながら考える」とは「見切り発車して転倒する」とは違います。路上生活者対策が停滞するということは、路上生活者の現状が固定化されてしまうという事であり、諸問題が路上生活者自身や地域住民に一方的に押し付けられてしまうという結果にしかなりません。言うまでもないと思いますが、その事を是非とも自覚しながら今後の事業を積極的推進して頂きたいと存じます。

 東京都にあっては、まず福祉局生活福祉課の管轄の生活保護行政部門、山谷対策課部門の山谷対策部門、これと路上生活者対策との統合、整理、連携を積極的に進めるべきだろうと考えます。そして、福祉局のみならず住宅、就労、保険・医療分野ともより一層連携し、縦割り行政と批判されないよう総合的対策をまずは都庁内で構築すべきと考えます。少なくとも「東京のホームレス」発表後、連携の部分においての前進は具体的に認められません。

 特別区にあっては、生活保護基準や入所基準がバラバラであったり、区外保護を認めるとか認めないで「喧嘩」しているとか、自立支援センター設置を区長が意識的に遅らせるとか、そういう下らない縄張り意識を払拭し、共同の社会問題に協力しながら対処していくという立場にもっと立つべきだと考えます。

 特人厚にあっては、特別区より共同処理され施設を管理し相談実務を実施(委託)する立場から、事業が「実施要綱」「実施細目」通りに運用されていない事実を覆い隠すのではなく、また、「実施要項」「実施細目」を勝手に解釈する事なく、「実施要項」「実施細目」通りに運営されているかどうかを常にチェック、指導し、また改善点があるならば路上生活者対策事業運営協議会において、その実態を明確にし、早急に改善する立場に立つべきであると考えます。

 また、路上生活者対策事業運営協議会にあっては、各部門がより連携しながら問題点を洗い出し、事業の円滑な推進を早急に計るべきです。


 私たちは路上生活者の立場から、そして路上生活者対策事業利用者の立場から、事業の効率的な運用が更に計れるよう提言をしています。社会が解決していかねばならない「ホームレス問題」である以上、社会の構成員たる私たちも民間支援団体の立場で積極的に事業を監視し、また改善への申し入れをしていく所存です。「ホームレスの自立支援策法案」が各政党内においても重要な政策課題として取り上げられている今日、国、公共地方団体、民間団体が連携し、社会が一体となりながら路上生活者の自立支援を行い、何らかの「失敗」があろうとも、もう一度人生をやり直し出来る社会を構築する事が私たちの目標でもあります。そして、そのためにも全国の中でも先駆的な試みを行っている東京都の路上生活者対策が内容的に後退するという局面は避けていきたいのです。私たちの提案を今後の「路上生活者対策」推進のためのひとつの素材にして頂きたいと存じます。ご検討の上、施策に反映されれば幸いです。
 

以上