東京都が新たな「ホームレス白書」を発表

ホームレス白書概要版はこちら
 5月24日、東京都福祉保健局は「ホームレス自立支援の着実な推進に向けて 東京ホームレス白書2」を発表しました。
 6年ぶりの白書書き換えに当然期待を持ち、隅から隅まで読みましたが、まあ、何の事はない、この間の実績、成果をより都民に分かりやすく書かれたもので、支援団体からすれば周知の事実の羅列でしかありませんでした。
 それでも出さないよりも出した方が良い。ホームレス問題をあまり良く知らない方々への理解を深めるためには丁度良い内容でしょう。東京都のホームページには概要版しかないので、全文を読みたい方はどこで入手可能なのか、福祉保健局に問い合わせして下さい(私はとある会議でタダで貰いました)。
 自立支援法5年後の見直しの時期に東京都が本書を出した事は評価に値するとは思いますが、他方で辛口を云えば、今後の方向性がまったく見えない点が大きな問題と云えるでしょう。本書の第4章は「今後のホームレス対策の方向」ですが、内容はたったの5頁、しかもその大半は「国の責務」と「国への提案要求内容」で、都区がどのように今回の実態調査結果を分析し、そこから基づく新たな施策内容をどう考えるのかの視点がすっぽり抜けており、基本自治体が何をしたいのかが明確でないのに、国の責任や、国への要求を連ねたとしても、国に対してはあまり強みにはならないのではないかと心配をします。とりあえず「今後のホームレス対策の課題」が4項目だけありますが、これもまったく整理されていない。当人の意識改革で済むなら対策などいりません。また、「効果的・効率性の観点から再構築の必要性」も3項目ありますが、これは単に施設は金がかかると云っているだけで、「効果」の議論がされている節がない。生活、就労、居住と縦割り的な支援を増加させ、混乱している現場の声がまったく反映されておりません。「効率」だけを先行する議論はまったく危険であり、今後問題となるでしょう。更に「再構築の方向」は3点、緊急と自立の併設、再利用の検討、就労自立の強化のみ。何のためにこれまで議論をしてきたのかと、口をあんぐりであります。第4章だけ全面改訂しなさい、また議論が深まっていないのなら第4章など除いて再発行しなさいと進言したい。
 大論文を書く程の「白書」ではないので、とりあえずの速報まで。

(笠井和明)