失業率5.3%時代に突入。なのに政府は、失業の果てに野宿になった人々への対策にはまったく無関心。ホームレスにも雇用対策を!見殺しにするな!
私達は野宿を余儀なくされた人々の諸権利を守るため、野宿当事者と共に都内各地で活動をしている団体です。
先日、東京における野宿者の概数が東京都より発表されましたが、全体で約五千六百名と対策の前進が多少なりとも行なわれて来たにもかかわらず大幅な減少に至っていません。他方、新宿や三多摩地域などは野宿者の数は増加傾向にあり、また、全国的には、今次の不況の影響を受け野宿者が増加する都市は増え続けています。
先日の完全失業率は過去最高の5・3%と絶望的な数値を弾き出し、今後の「テロ不況」「構造改革」などの影響で失業者の数は増大すると言われています。
失業者の内、失業保険給付が途切れた人々、また社会保障などに未加入の中小零細企業で失職した人々は、貯蓄が途切れ、家族や友人から見放されてしまえば、いつ野宿状態に至っても不思議ではない構造にこの国は至りつつあります。
事実、私達が炊出しや夜回りをしていれば、地方の工場や飲食店などでリストラされたという新たな野宿の仲間に毎週出あいます。不況の深刻化は労働者の生活を完全に破壊する程にまでに進行しています。
私達は政府にこれ以上野宿者を増やすことのないよう、また、不幸にも野宿に至ってしまった人々の社会復帰、自立支援を責任をもって行なうよう提言をし、国会への請願、中央省庁との交渉を全国のNPO団体、NGO団体と共に続けて来ました。現在、政府は雇用対策、失業対策の中にホームレス状態にある人々を含めず、野宿状態の人々の諸問題の対応を地方自治体になすりつけ知らん顔をしています。
政府は今年度の補正予算に1兆円規模の雇用対策費を計上すると言っていますが、これだけで果たして十分なのでしょうか?円滑な再就職支援や職業能力開発の支援は重要な事ではありますが、失業の結果今最も苦しんでいる人々、野宿に至ってしまった人々、野宿に至りそうな人々(その多くが再就職が{裏へ}
困難といわれている50代、60代のの中高齢層)への具体的な対応はここでは何も語られていません。政府は「緊急地域雇用特別交付金」で森林作業の雇用対策をするとは言っていますが、実際、この「交付金」を使った奥多摩などの森林整備事業ではこれまでたったの十数名しか野宿者を雇ってはくれず、しかも、半年の期限が切れたら宿舎からも追い出され野宿に戻ってしまっています。
野宿状態にまで至ってしまった人々、また、野宿状態に至りそうな人々が願い、要望しているのは、貧しくとも社会の中で暮らしていける安定した屋根と安定した仕事です。そして、そのための個々人の努力を支える社会システムです。
私達は政府、地方自治体が共同でホームレスの自立支援策を行え、そして、民間支援団体、NPO団体などの力を有意義に行使できるような法の整備を求め、民主党国会議員の協力を得、現在国会に「ホームレスの自立支援策等に関する特別措置法案」を提出しています。
この法案は全体の雇用対策から考えても、決して些細な法案ではありません。失職の先に自らの生活を守れずに野宿に至ってしまった人々にもう一度自立へ向けてのチャンスを作り出す法であり、また、野宿に至りそうな人々を未然に防ごうとする法案です。このことを国が責任をもって行なう事を明記した重要なセーフティネット法案です。
欧米諸国、または韓国などでもこの種のホームレスを対象とした自立支援・援助の法律は制定されています。今日ホームレス問題が社会問題としてあらゆる都市において問題化され、しかも地方自治体の能力では対応がしきれない我が国の状況下においては、国が積極的にこの問題に関与していく事が国内的にも国際的にも問われているのです(国連社会権規約委員会でも勧告がなされている問題です)。憲法においても「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されている筈の我が国においていままでこのような法律がなかったのが不思議なくらいなのです。
現在この「ホームレス自立支援法案」は厚生労働委員会に付託され、大詰めの状況に来ています。私達は私達の今後の生き方を左右しかねないこの「法案」の行方を自ら見届けたいとの思いで、国会前での大衆的な行動を取っています。「法案」がまともな形で委員会を通過するよう、私達が出来ることをやっていこうとの切実な思いでの行動です。
すべての皆さんが、おそらく心のどこかで気に留めていると思う「ホームレス問題」。この問題を臭いものに蓋をしろ、かつて青島都政が行なったような対策もせずに強制排除するという方法ではなく、雇用対策の枠組みの中で、もう一度社会復帰できるような自立支援策を政府が責任をもって行なう事による「解決」を求める私達の運動に是非ともご支援をお願いしたいと存じます。
これからの冬の季節、私達の仲間は一年で一番厳しい生活を余儀なくされます。社会の支えがないからこそ、冷たい路上で寝ざるを得ず、公園や河川でテントを張って寝ざるを得ないのです。私達を見過ごすのではなく、また排除するのでもなく、私達と共に、この国を失業しても、野宿になっても、まだまだやり直しが出来る国へと変えていきましょう。
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