第154回通常国会において、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(平成14年法律第105号。以下「法」という。)が平成14年7月31日に成立し、本日公布及び施行されたところである。
法においては、生活保護法による保護の実施によりホームレスに関する問題の解決を図ることが「ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標」(法第3条)の一つとして位置づけられており、また、今後、「ホームレスの実態に関する全国調査」(法第14条)を踏まえて策定される「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(法第8条)には、生活保護の実施に関する事項も盛り込むこととされているところである。
これらの趣旨等を踏まえ、今後、下記のとおり、当該基本方針が策定されるまでの間におけるホームレスに対する生活保護の適用に関する取扱いを定めたので、了知の上、生活保護の適正な実施に遺漏なきを期されたい。
なお、本通知の1については、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定による処理基準である。
1 ホームレスに対する生活保護の適用に関する基本的な考え方
生活保護制度は、資産、能力等を活用しても、最低限度の生活を維持できない者、すなわち、真に生活に困窮する方に対して、必要な保護を行う制度である。
したがって、ホームレスに対する生活保護の要件については、一般世帯に対する保護の要件と同様であり、単にホームレスであることをもって当然に保護の対象となるものではなく、また、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものではないことに留意し、生活保護の適正な実施に努めること。
2 保護の方法
(1)要保護者に対する基本的対応
就労の意欲と能力はあるが失業状態にあると判断される者については、その地域に自立支援センターがある場合には、まずは自立支援センターへの入所を検討する。
自立支援センターに入所し就労努力は行ったが、結果的に就労による自立に結びつかず退所した者は、改めて保護の要件の確認を行い、必要な保護を行う。
また、例えば、アルコール依存症や精神的・身体的疾患を有する者、高齢者及び障害者等であって、その生活状況等の十分な把握や自立に向けての指導援助が必要な者については、保護施設への入所や、治療が必要な場合には医療機関への入院等による保護を行い、必要な療養指導等により、金銭管理能力及び生活習慣の回復を図るなど、自立を支援する。
そのため、地方自治体においては、ホームレスの現状等を踏まえ、積極的に保護施設の整備に取り組む必要がある。また、保護施設の入所者で適切な援助等があれば居宅生活が可能となる者を支援する保護施設通所事業(「保護施設通所事業の実施について」(平成14年3月29日社援発第0329030号厚生労働省社会・援護局長通知)に定める保護施設通所事業をいう。以下同じ)の十分な活用により、施設から居宅への移行を促進させ、もって施設定員を有効に活用する取組も必要である。
また、入所の目的を達成し保護施設を退所した者や、必要な治療を終え医療機関から退院した者については、公営住宅等を活用し、居宅での保護に移行するなど、実情に応じた保護の変更等必要な検討を行う。
なお、当然のことながらホームレスの状況によっては、養護老人ホームや各種障害者福祉施設等への入所についても検討する。
(2)急迫保護
病気等により、急迫した状態にある者については、申請がなくとも保護すべきものであり、その後、退院等が可能となった場合には、要保護者の保護受給の意思確認を行い、保護の申請(保護の変更申請)が行われたときには、保護の要件を確認した上で、必要な保護を行う。
退院後については、その回復状況にもよるが、基本的には、上記(1)により対応する。
なお、要保護者が医療機関に緊急搬送された場合については、連絡体制を整えるなど医療機関との連携を図り、早急に実態を把握した上で、急迫保護の適用の要否を確認する。
3 留意事項
(1)自立支援センター等の入所者への生活保護の適用等について
生活保護は、その利用し得る資産等あらゆるものを活用してもなお最低限度の生活が維持できない者に対して、その不足分を保護費として支給するものである。
したがって、例えば、自立支援センターの入所者については、入所中の生活は自立支援センターで保障されており、医療扶助を除き基本的には生活保護の適用は必要のないものであること。
また、社会福祉法上の第二種社会福祉事業として行われている生計困難者のための無料低額宿泊所の利用者については、生活扶助、住宅扶助、医療扶助等が必要となる場合があるが、保護の適用に当たっては、十分にその生活実態を把握するとともに、自立に向けた必要な指導援助を行うこと。
(2)保護施設入所者について
保護施設に入所した者については、その精神的・身体的条件に応じ、退所後の自立に向けて必要な生活指導等を行うとともに、居宅生活が可能な者については、保護施設通所事業の積極的な活用等により、居宅生活への移行を図ること。