緊急一時保護センター・大田寮内で改善運動が開始されました。
 春は例年ですと生活保護以外の対策が途切れる季節ではありますが、私たちの要求運動の成果として今年からは緊急一時保護センター・大田寮(ひと月身体を休め、相談を受けられ、就労意欲のある仲間は仕事を探すための施設=自立支援センターなどに自動的に入寮できる施設)が通年的に開設される事となっています。
 新宿区では毎月、月初めに入寮のための抽選がありますが、3月の枠はたったの13名とおよそ信じられない少ない枠となってしまっています。抽選のために並んだ仲間が百五名。すなわち倍率約8倍の狭き門です。新宿区の当初割当てられた枠は28名分あります。これにしても少なく需要から考えれば50名前後が必要だと私たちは考えているのですが、その枠すら守れないようでは先が危ぶまれます。倍率にしても限界とも言えるのが2倍から3倍程度までであると考えます。このような状況が続いているようでは期待感も消え失せ、役所に対する不信感しか残りません。すなわち、大田寮の入寮は危機的状況になっていると私たちは考えざるを得ません(他区も同様に渋谷が先日5名しか入寮できず、豊島区では突如抽選受付が延期となる混乱も生じています)。
 私たちが要求に要求を重ね、ようやく設置された施設がこんなにも使い勝手が悪いようでは困ります。私たちは各区の枠が毎月少なくなる原因を調査して来ましたが、どうやら決定的な原因は大田寮の内部にある事が判明しました。新宿区などの「説明」によれば、大田寮に入ると1週間目から相談を受けられる事となっていましたが、実際は入所後、3週間か4週間目にようやく一回目の相談が出来るという状態だと言います。その結果1ヶ月の入寮予定が自動的に延長され、そのしわ寄せが各区の入寮枠に跳ね返るという構造となっています。大田寮の相談事業を委託している東京福祉士会なる団体が十分な人員を配置しおらず、また、それを知っていながら23区の調整機関=特人厚が放置しているとの事実も判明しました。矛盾を利用者や利用予定者に押し付けるまったくの役所的な構図です。
 大田寮に入寮した新宿と池袋の仲間は、この矛盾を解消しようと既に寮内改善行動に入っています。3月12日寮長に対し要望書を提出し交渉を行いました。これに呼応しながら新宿連絡会、池袋連絡会は合同で東京都と特人厚に対する改善申し入れへの準備に入っています。大田寮改善は、私たちの春期闘争の大きな課題です。連絡会としても今月中に申し入れ書を提出し、来月4月4日の新宿区受付の様子をみながら、窓口現場行動、そして翌5日に東京都と特人厚に対する大衆的な行動(第一次交渉)を予定しています。


<大田寮の実態>
 入寮した仲間の実態は通常なかなか見えては来ませんが、入寮者からの聞き取りを元に再現してみると、入寮して数日たって健康診断を受け、また数日後にレントゲン検診を受ける。あとは相談待ちと称した「自由時間」。相談が行われるのが3週間か4週間待たされた後。相談を受けて自立支援センターに入寮できるまで、これまた待機待ちと称した「自由時間」。うまく行って、自立支援センターに入寮できるのは、大田寮に入ってから1と月半程たってから。そんな具合なので、とにかくやる事がない。「寮生活の手引き」もなし、自立支援センターがどこにあるのかも、どんな施設なのかをガイダンスするものも一切なし。「相談まだか?」と事務所に問い合わせても「とにかく待つ事」と支持される。医者は週に一回来る事来るので、医療の相談は出来るけれども、今後の社会復帰に向けた相談はこちらからは出来ない。どこに相談員がいるのか、誰が相談員なのかも分からない。娯楽室にはテレビと雑誌などがあるだけ。テレビを見飽きて本でも読もうと思っても、娯楽室には古い週間誌や推理小説が数冊あるだけ、これからの社会復帰に役立ちそうな本もない。風呂は隔日で入れるのと洗濯は自由に出来るので、まあ、やる事と言ったらそれくらい。ある仲間は「収容所というのは今までテレビなどでしか見たことなかったが、これが収容所かとはたと気づいた」と申している。また、ある仲間は「養豚場の豚の気持が良く分かる」とも申している。朝7時に起きて飯食って、ごろごろして、昼飯食って、洗濯して、テレビ見て、ごろごろして、散歩して、5時門限なのでそれまで帰って、晩飯食って、風呂入って、11時までテレビ見て、寝る。「いやあ、太った太った」という仲間、「昼間寝るので夜など寝られないよ」という仲間、「食い過ぎて便秘になっちゃった」と笑う仲間などなど。社会復帰の入り口施設と言いながら何も準備されていない自由放任、食っちゃ寝施設のおかげで仲間は実にのんびりしているそうである。石原さんなどがもし視察に来たら怒鳴り出すのではないかと思われる程、非合理、かつ無計画施設に現状では堕している。

緊急一時保護センター・大田寮 施設長殿        2002年3月12日

要望書

緊急一時保護センター・大田寮の改善を求める寮生有志
代表 ○○△△ ×棟□号室

 私たちが世話になっている大田寮とは一体どういう性格の施設なのか?

 私たちを含め多くの仲間達は、もう一度やり直すチャンスを求めてこの施設に入寮した。自分に適した仕事に就き、住み込みや民間アパートでも良いから安心して住める住居を確保し、地域社会の中で慎ましやかに暮らせるよう願って、この施設に入寮したのだ。
 そのための施設だと、東京都福祉局、や福祉事務所は私たちに「説明」をして来た。もちろん身体を休めるという事も重要であるが、それ以上に私たちはこの施設に、その後の自立への足がかりがあると判断したからこそ、自ら応募し入寮して来たのだ。
 が、現実は、健康診断をするだけで、私たちの就労意欲を喚起するようなプログラムも、自立支援センターなど行政支援策を詳しく知る機会もなく、たった一回の生活相談を受けるだけで、何週間も順番を待たされ続けている。当初の約束である原則的に一ヶ月以内に処遇を決定することすらも守られず、一月以上待たなければ自立支援センターに入れないのが現状である。
 もちろん、相談にそれ相応の時間がかかるのは理解できる。が、相談の日まで何日も何週間も待機してろという体制は、入寮者の自立への意志を愚弄するものに他ならない。
 私たちは、遅くとも入寮後2週間目から面談、相談を行えるよう改善する事、また、相談がある仲間はいつでも相談に乗れる体制に改善する事、アセスメントが確定した段階で待機期間を長期に設ける事なくすみやかに自立支援センターに入寮できるよう改善する事を要求する。
 
 また、緊急一時保護センターの利用対象者以外の仲間が多く入寮して来ている事実は一体どうなっているのか?生活保護に該当しないという条件で私たちは入っている筈である。が、実際は生活保護に該当する高齢者や病弱者が多く入寮して来ている。この施設は保護施設なのか?雑居施設なのか?私たちにはとうてい理解できない。入寮後体調を崩す仲間、入寮後に病気が発見された仲間ならともかく、入寮段階で重篤な病気である仲間、また、就労自立が困難と思われる高齢者は福祉事務所窓口の本来業務の中で、保護施設に入寮させる、ドヤなどの居宅保護を開始するという運用をすべきではないのか?
 私たちは、施設内にいる生活保護対象の仲間は、ドヤや更生施設などへ転居させ、生活保護を適用し、安心して通院できる環境、安心して老後生活を送れるような環境を提供するよう要求する。また、今後、福祉事務所窓口においては、利用対象者外の者を当施設に入寮させないよう施設側からも強く苦情を申し立てるよう要求する。
 
 私たちは緊急一時保護センター・大田寮が、私たちの希望を叶え、自立への入り口施設になるよう強く願っている。施設長にあっては、この施設が自立支援センターやグループホーム事業と一体化した都区の自立支援システムの一施設である事をより自覚し、事業の円滑な推進のためにも入寮者の声を真摯に受け止めながら、運営を行うよう強く望む。

以上

*当人の今後の自立支援に影響がないよう配慮し、代表者氏名は当ホームページでは伏せるようにしました。

利用者代表と施設長との交渉の結果、施設長から「現状は決して満足しているものではない」との言質を勝ち取り、改善のための前むきな姿勢を示させました。利用者への「説明」についてより分かり易く不安がないようにする、自立支援センターのガイダンスについては早急に娯楽室などで公報する、洗濯機を増設するなどの約束を取り付けました。