約束通り「地域生活移行支援事業」6月スタート

「説明会」が開催され、7月から「個別相談」実施

 6月21日、戸山公園、22日、中央公園を対象にした「ホームレス地域生活移行支援事業」についての「説明会」が開催されました。21日は丁度台風が接近する大荒れの天気で参加者は少なめでしたが、22日は好天に恵まれ多くの二百名を越える参加者がありました。今回の「説明会」は仕事などの関係で時間の調整が出来るよう午後3時から、午後5時から、午後7時からと一日に3回実施し、また、戸山公園では隣接施設を利用し、中央公園では公園内に特設会場を設置するなど、出来るだけ多くの仲間が参加できるような新たな試みもなされました。新たな事業をする際、東京都はこれまでは私たちが設定する「交渉」などで「説明」をすると云う形でしたが、今回は主体的に「説明会」を開催し、直接行政担当者が仲間の前で「説明」をし、質問に応えると云う、ある意味「当たり前」の事を初めて行った事は評価すべきだと思います。
 「新事業」の実施に当たって、2月のプレス発表以降、都区行政内部または支援団体間においては必ずしも建設的な議論がされてきた訳ではなく一時期はかなりの混迷を深めていましたが、これらの議論を懸命にまとめ、当初計画通り「6月実施」にやっとこぎ着けたと云う感じです。「急場凌ぎ」と云う批判は一部においてありますが、2月以降議論する場は何度もありながらもその機会を利用しなかった、もしくは建設的な議論をそもそも拒否した部分の「ためにする」批判でしかないでしょう。しかしながら、今回の「説明会」の「説明」が十分であったと云う訳でなく、今後きちんと反省する点は多々あると思われます。「説明会」参加者をあまりにもオープンにしすぎたため、戸山公園説明会(第3回目)のように事業利用対象者以外の者(渋谷の支援者)が質問時間の多くを「渋谷問題」の「追及」の場にするなどして、結果的に利用対象者の質問を妨害してしまったり、また、「説明」の用語があまりにも「役人言葉」に終始したため「勘違い」が生じてしまったり、また、説明会資料があまりにも簡易すぎ資料にもなっていなかったり、「説明会」への参加証のようなものが発行されず、「説明会」と「相談」のつながりが明確にされなかったり、そして「具体論」での説明があまりにも「不明瞭」「先送り」であった等の事等は今後の反省点としてしっかりと認識する必要があるでしょう。
 いずれにせよ「説明会」の内容は、連絡会チラシ等で既に仲間に報告している事の再確認以上ではなく、形式的に執り行われただけと云えるのかも知れません。しかし、そうだったとは云え「説明会」で、ようやく「新事業」が開始された事はおおいに評価すべきでしょう。
 この「説明会」を受け、戸山公園、中央公園で7月1日から同時に「個別説明」の巡回相談が開始されました。戸山公園はホームレス支援機構、中央公園は東京社会福祉士会が担当し、「説明会」を受け事業への参加意思があるかないのか、また参加の場合の本人の希望(宿泊所を利用しないかするか等)を聞き取り、7月一杯をかけて対象地域で起居している仲間全員の意思を確認する計画です。
 予定では、最初の「相談」(実質アンケートのようなもの)を今月末か来月初頭に集約し、アパート確保希望者及び、臨時就労希望人数を割り出し、移行決定と移行時期をそれぞれ確定し、8月末ごろから順次、アパートへ移行するとの事です。就労支援についても新宿ホームレス支援機構が担当し、8月以降、臨時就労の振り分けや再就職支援等を実施する予定でいます。
 どの程度のアパート移行者がいるのか等は未だ未定ですが、希望者でアパート生活が可能な仲間が、ほぼ無条件で移行できるよう、連絡会としては状況に応じながら適時要望を出し続けて行きたいと思います。また、アパート移行者を見越して「新宿連絡会 やねの会」(準備会)を発足し、アパート生活者の横のつながり、そして就労問題への仲間自身による取り組みを促進させていく予定でいます。
 
 強制的な手法ではなく、仲間の選択肢として新たな事業を配置させる事が出来た事は、自立支援事業に続く大きな東京における施策上の前進であると思います。この力を維持し、屋根と仕事に結びつく対策の拡大、拡充を事業の推移を見守りながら、更に求め続けていきたいと思います。

(新事業についての政策的な評価についてはshelter-less21号「2004年TOKYO路上感」に笠井和明の最新論文が掲載されています)