平素から「路上生活者対策」の推進にご尽力頂き感謝しております。
また、本年から実施されている「ホームレス地域生活移行支援事業」の実施にあたっては生活福祉部のみならず全庁的課題として取り組んで頂き、区内二公園でのアパート移行が実際のものになっているのを非常に頼もしく感じております。
厳冬期対応宿泊事業の継続について
さて、「ホームレス自立支援法」制定以降、この問題は野宿者のみの責任ではなく、野宿者を多く生み出し、またそれを固定化させている社会の問題であるとの観点が全国的に広まっていると私たちは感じています。貴区におかれましても長年に亘り23区に先んじて各種路上生活者対策を実施してきた経緯、苦闘が、ようやく社会的、法的に認知されつつある段階に今日至っていると考えます。
思い返せば1994年「都区検討会」が発足した直後に実施された「なぎさ寮」での「冬期臨時宿泊事業」が新宿区における本格的な路上生活者対策の始まりだったと思います。様々な批判があった中、新宿区内に起居する路上生活者の多くの方々をその生命さえもままならない冬期の間、2週間だけでも順番に「暖かい部屋」に迎えいれ、せめて健康を取り戻してもらいたいと云う人道的な立場から路上生活者対策はスタートしたとも言えます。
その後、生活保護関連施策の拡充、自立支援センターの設置、緊急一時保護センターの設置と都区共同の路上生活者対策は年々拡大、拡充を続けていますが、その中にありながらも冬期の臨時宿泊事業は(一昨年から緊急一時保護センターの厳冬期対応と形が変わりましたが)継続して毎年実施されて来ました。
これら宿泊事業の経緯と、そして利用実績の数値は、少なくとも新宿区内において臨時宿泊の希望者が「現実問題としている」と云う事を示し続けています。
私たちは御存知の通り、新宿地域において十年前より「仲間の命を守る」の一心で越年越冬の取り組みを行なっています。医療相談、各種相談、炊き出し、毛布配給、衣類配給、巡回パトロール、救急車添乗、福祉事務所への引率、保護申請の手助け、各種施策情報提供等を集中的に当事者と共に行い、寒空の中で路上生活をせざるを得ない人々、新たに路上生活に至り途方に暮れている人々の最低限度の生活を守る活動に専念して来ました。
私たちが知り得た冬の路上の「恐さ」は、簡単には表現できぬ程の「恐さ」です。また、路頭に迷い、一人ぼっちで野宿せざるを得ない人の、身体的そして精神的な「恐怖」も想像できぬ程の「恐怖」であろうと感じます。
現在、「ホームレス地域生活移行支援事業」が戸山、中央公園を舞台にある程度の数で実施されています。この事業を私たちは評価をしておりますが、残念ながらこれだけの規模でも新宿区内の「路上生活者問題」は「氷山の一角の解決」にしかなりません。中央公園や戸山公園を除いても、新宿駅周辺に約600名近い路上生活者が居り、また高田馬場、飯田橋等の繁華街、神田川周辺や、その他小さな区立公園などにも多くの路上生活者が居ります。これもまた「現実」であります。今回の事業対象が戸山、中央公園に起居する者が対象であり、また、自立支援関連施設への入寮が毎月40名以下と制限されている現状においては、必然的に今年の冬も多くの路上生活者が冬の路上で命を晒さなければなりません。
私たちは確信をしています。路上生活者対策の拡大拡充がなされていたとしても、冬場に命を晒す路上生活者が現に居る限りにおいて、冬場の厳しさから最低限身を守る宿泊事業は必要であると。
もちろん、短期宿泊ではなく、自立支援プログラムに乗せられる長期宿泊が本来の理想形である事は言うまでもありません。しかし、それが今すぐに出来ない以上、臨時でも、短期でも、可能な限りの受入れ体勢を整えるのが、最低限の人道的な対応であろうと私たちは考えます。
厳冬期対応宿泊事業の利用者で施設内で病気が発覚し生活保護に移行した者もおります。また、施設内で自立支援センター等東京都の自立支援事業について初めて知り、利用の希望を強く持った者もおります。非定住者が多い新宿地域において厳冬期の短期宿泊事業は、希望を失いかけている人々に勇気と正確な情報をもたらす事業でもあります。
貴区におかれましては、今年度も昨年度同様500名の枠での厳冬期短期宿泊枠を確保するよう強く要望致します。