「ホームレス自立支援立法」の国会上程情勢が急変しました。民主党議員の尽力により今国会中にも超党派の議員立法として上程される見通しとなっています。早ければ6月下旬には成立となります。新宿連絡会としては、この法案の早期成立を求める立場から、秋に予定していた国会闘争を前倒しし、6月19日から成立の日まで要請の行動を展開する事を決定しました。皆さまの御注目を宜しくお願い致します。
国は野宿者に責任を取れ!
「自立支援立法」を国会で通そう!
初夏の国会闘争へ!

●キャンペーン行動
6月15日(金)都庁前情宣
午前11時都庁前
6月18日(月)区役所前情宣 
午前8時半区役所前
●国会行動
6月19日(火)国会へ!
午前9時区役所前集合・出発!
(以降成立まで国会闘争)
民主党ホームレス問題対策ワーキングチームによる
ホームレス自立支援立法(案)  2001.4.12

第一 立法の目的・基本趣旨
 本人の意志によらず憲法25条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることができていないホームレスについて、国の責任を明確にするとともに、その生命・人権を守り、自立支援のための施策を行い、あわせてホームレスが多数存在する地方公共団体への支援を実施し、もってホームレスの社会参加を図るとともに、ホームレスの発生の防止に努める。

第二 立法の形式
 立法の基本的形式としては、多数のホームレスが発生しているという現状自体が正常ではないとの認識から、立法の目的と実効性という観点も踏まえ、7年程度の臨時措置法又は特別措置法の形式による時限立法とする。

第三 法案の具体的内容、
 1、定義
 ★ホームレス
  自己の主たる定住の生活場所として適法な占有
  権限を有していない者
 2、責務
 ★国の責務
  ホームレスの自立支援及び発生の防止について
  国が責任を有することを明確にする。
  所管省庁は内閣府とする。
 ★地方公共団体の責務
  国の委任により都道府県、政令指定都市及びそ
  の他地方公共団体は、ホームレスの自立支援及
  び発生の防止についての事業実施の主体として
  の責任を有する。
 ★国と地方公共団体との連携の明確化
  国と地方公共団体は、本法に基づく施策の策定・
  実施に当たっては、必要な施策を総合的かつ相互
  に連携を図りつつ講ずる。
 ★国民・住民の責務
  国民又は住民はホームレスの自立への協力につい
  て努力義務を負う。
 ★ホームレスの責務
  ホームレス自身の自立への努力規定を設ける。
 3、国によるホームレスに関する実態調査の実施
  国は、総合的なホームレス施策の立案及び実施の
  ためのホームレスの実態に関する全国調査を時期
  を明記して行い、調査結果を踏まえ、早急に基本
  方針を策定する。
 4、基本方針の策定
 ★内閣総理大臣による基本方針の策定
  内閣総理大臣は、ホームレスの自立支援及び発生
  防止等に関する基本方針を定めなければならな
  い。
 ★基本方針策定に当たっての各省庁連携
  内閣総理大臣は、基本方針を作成しようとすると
  きは、厚生労働大臣、国土交通大臣、総務大臣、
  警察庁長官、内閣官房長官その他関係行政機関の
  長と協議しなければならない。
 ★基本方針の内容
 (1)雇用施策の推進・確立
   ・安定した雇用の確保(第二失対とならない仕
    組みで、公的雇用創出を積極的に行うととも
    に、現に実施されている緊急日雇労働者多数
    雇用奨励金や緊急地域雇用特別交付金の根拠
    規定となるための内容とする。)
   ・職業能力開発(特にホームレス向けの一般能
    力指導を含む多様かつ就労に直結する能力開
    発施策を実施することを内容とする。)
   ・失業対策の充実
   ・自立支援事業との緊密な連携の確保
   ・ホームレスの発生を防止するための配慮(雇
    用保険法の運用等を含め、雇用施策全般にお
    ける配慮義務を内容とする。)
 (2)福祉施策の推進、確立
   ・生活保護法の適切な実施(単に居住地がない
    ことや稼働能力があることのみをもって保護
    の要件に欠けることとしないこと、生活保護
    を悪用し不当に利得を得ないことなどを内容
    とする。)
   ・生活保護と自立支援事業との緊密な連携の
    確保
   ・全国統一水準での食糧提供等の実施
  (3)住居施策の推進
   ・緊急的な住居支援の実施(ドヤ券の発行等
    の弾力的な施策が実施できるもの)
   ・公営住宅の優先的割り当て
   ・民間住宅入居への支援(金銭的な補助と保
    証人対策の両面が可能となるような内容)
   ・生活保護における住宅扶助の単給化
  (4)保健・医療施策の確立
   ・ホームレスへの健康診断の実施
   ・無料又は低額での適切な医療の実施
   ・結核等のホームレスに流行する危険性のあ
    る疾病対策
   ・アルコール中毒対策
   ・薬物対策の強化
 (5)総合的な生活支援の確立
   ・自立支援事業の実施(現在、既に行われて
    いる自立支援事業を法律に位置づけ根拠規
    定とするとともに、充分な事業規模と入所
    期間の確保、雇用確保策及び住宅保障策な
    どの他の施策との連携、多様なプログラム
    の実施などを内容とする。)
   ・行政による各種相談の実施〈雇用・福祉・
    医療・住宅等に加え、ホームレス発生の原
    因の一つになっている多額の債務に関する
    相談や、行政による巡回相談等を含む幅広
    い内容とする。)
   ・教育に対する支援(ホームレス発生の原因
    の一つとなっている教育からのドロップア
    ウトを防ぐとともに、ホームレスの子に対
    する義務教育の実施を支援することを内容
    とする。)
   ・ホームレスの自立のための公的・民間のソ
    ーシャルワーカーの緊急増員
 (6)人権擁護施策の推進
   ・ホームレスの人権の尊重
   ・国民及び地域住民への啓蒙
   ・基本的人権の完全なる行使の確保(住民寮
    がないことにより、各種の基本的人権が制
    約されていることへの対策を溝ずることを
    内容とする。)
 (7)民間団件との連携の必要性と推進
   ・NPO等民間同体の付置づけの明記
   ・国及び地方公共団体とNPO等民間団体との
    本法に基づく施策の実施に当たっての連携
 (8)地域の環境・安全対策の推進、街づくり
   ・地域の環境・安全対策
   ・多様な住民が共存できる街づくり
 (9)予防施策の推進
   ・総合的なホームレスの発生予防施策の実施
 5.実行計画の策定
 ★計画期間
  法案自体を7年の時限立法とした場合、実行計画
  については5年程度を計画期間とする。
 ★実行計画の策定者
  都道府県、政令指定都市、その他ホームレスの多
  数存在する地方公共団体
 ★実行計画策定に当たっての配慮
  政令指定都市、又はその他のホームレスの多数存
  在する地方公共団体が実行計画を策定するに当た
  っては、都道府県と連携をとることとする。
 ★実行計画の内容等
  ・基本方針に基づく具体的なホームレスの自立支
   援及び発生防止等の施策
  ・当該実行計画への民間団体・地域住民の意見反
   映
  ・実行計画は、毎年その進捗状況を点検し、内閣
   総理大臣に報告する。
 6.財政措置等
 ★交付金、負担金・補助金の交付
  ホームレスの自立支援及び発生防止に資する交付
  金、負担金・補助金を国から地方公共団体へ交付
  する。
 ★適切な予算上の措置
  国は、ホームレスの自立支援及び発生防止に必要
  な予算措置を講じる。
 ★税・財政上の特例措置
  ホームレスの自立支援及び発生防止のための税制
  上・財政上の特例措置を講じる。


 何故立法化が必要なのか?

新宿連絡会・笠井和明

 ホームレス立法制定要求の動きは1999年2月中央省庁による「ホームレス問題連絡会議」の開催前後から、地方自治体レベルの国に対する要望としてあがっていた。新宿区などは生活保護の現在地主義を改め
る特例法が必要だと言い、東京都、横浜市、大阪市などは仮小屋撤去の実効性ある法令の整備を求める(第2回連絡会議)など各自治体一様に悲鳴とも思えるような主張を繰り返してきた。99年4月には「ホームレス問題連絡会議関係都市会議(東京都、新宿区、川崎市、名古屋市、大坂市、横浜市)はこれら百科雷鳴する議論を一定まとめ(1)国の責任の明確化と指針の明示(2)相談体制の確立(3)自立支援事業の位置付け(4)公共施設の適正化を柱とする「特別立法」制定を当時の厚生省社会・援護局長に求めて来た。
 が、99年に発表された「当面の対応策」においても、また、同年から開始された厚生省による「ホームレスの自立支援方策に関する研究会」においても法制度化を示唆する文言はいずれも採用されず、今日に至っている。政府ー中央省庁の考えとしてはホームレス対策は現行法で対応できるというのが一貫した考え方なのであろう。
 現行法のままで対応できるのか、それとも新たな法制度が必要なのか、という点については全国の野宿者運動の側、支援運動の側からも様々な論点がこの間提起されている。
 釜ヶ崎反失連は99年5月「野宿生活者支援法(案)」の制定をホームレス問題連絡会議に求め、また、私達も00年9月「ホームレス支援基本法」「自立支援事業関連法」の制定を国会に求め、以降国会請願デモや議員ロビー活動を精力的に行って来た。また、連合大坂も00年11月「自立支援特別立法」の制定を求めるシンポジュウムを開催するに至っている。無論、これらの団体がまとまっているかと言えば決してそうではなく、それぞれのスタンスで主張し、行動しているのが現実である。他方、現行の生活保護法の運用改善が先決とする団体も多くあるし、要求運動よりも自前の力の部分に主軸を置いている団体も多い。
 つまり、全国の運動団体がすんなりと「立法化要求」にまとまる情勢には残念ながらなってはいない。
 さて、今般発表された民主党ワーキングチームによる「ホームレス自立支援立法(案)」であるが、ここにまで至る経緯はともかくとして、その内容を見て頂ければ分かる通り「ホームレスの自立支援」をキーワードにしながら国の責任と義務を明確化させたものである。また、ホームレス概念も広くとらえ、防止策も含めて施策課題にあげるなど、かなり「リベラル」かつ国際感覚もある的を得た法案にまとまっている。
 私達は民主党云々という事ではなく、野宿者の利害という観点からしてこの法案を評価し、支持する。つまり、東京サイドの運動から見ても、今後の対策の拡大、拡充(とりわけ就労面)、そしてホームレス化の予防策を路上に作り出すためにもおおいに活用できる法律となる事が予想されるからである。
 国の関与(国の責任を明確にする事)が必要である事は各運動団体共通の認識であると思う。地方自治体もまた財政的な理由などから国の関与を求めているし、それがなければ対策も進められない深刻な事態に陥っている。政府ー中央省庁のこの10年来の怠慢ぶりを糾していくためにも法律で縛るという手段は最も有効、かつ最もシンプルな手法であると考える。もっとも法律が出来たから万々歳という性格のものではなく、今後の対策推進のためには、筋の通った要求行動がなくてはならないだろうが、それにしたところ、根拠法があるのとないのとでは大違いである。また、生活保護法を本来の理念通りに運用させていくためにも、自立支援に関わる立法は必要である。
 99年の政府「当面の対応策」ではまったく駄目だと私達は言って来た。ならば国に何をやらせて行くのか?国をどうやって動かして行くのか?私達の運動はもはやそういうレベルにまで届いているのである。
 もちろん、議員にまかせるだけの運動では「政治の妥協」が生じかねない。この立法案も超党派議院立法化を追及し、6月上程を射程にいれているが、安易な政治の妥協は「治安」の観点がするりと入って来る危険性を伴う。それをさせないためにも、大衆的な要求行動を積み重ね、野宿者の要望というものを更に社会化させていく必要がある。「俺たちが勝ち取った法律」と言えるような運動を気作りあげて行きたい。