東京都知事 石原慎太郎 殿

要望書

二〇〇一年五月一日

全都実(全都野宿労働者統一行動実行委員会)
参加団体/新宿連絡会、池袋連絡会、
東京駅野宿者有志、大田区野宿者有志、三多産地区野宿者有志、など

電話 〇九〇 - 三八一八 - 三四五〇(笠井)

 私達全都野宿者が長年にわたり設置を強く望んでいた都区共同事業の自立支援センターが昨年11月ようやく開始され、若干の事業内容上の問題点が明らかになったとは言え、まずまず順当な成果をあげつつあります。また貴福祉局においては全国初の「ホームレス白書」を発表しホームレス問題の社会的な解決に向けた基本的視点を提示し、その具体策として、新年度からセンターの増設、緊急一時保護センターの新設、グループホーム事業の新規開始など、総合的対策への踏み込みを具体的に計画されている事は私達としても評価するものであります。
 が、私達をめぐる状況は悪化の一途をたどっています。それは、私達の仲間の数が単に増え続けているだけではなく、社会的偏見の目にさらされながら、安定した職にも就けず、低廉な賃貸住宅にも移り住めず、一旦路上に至ったらそこから脱しようといかに独力で努力してもそれが思う通りにいかない悪矛盾的な構造が固定化している事によります。私達の仲間は今や都市におけるひとつの層として形成されつつあり、また、いつ野宿状態になってもおかしくない人々も増え続けております。
 私達は貧しくとも野宿にならなくても済み、また一旦野宿に至ったとしても努力しさえすればなんとかやり直しが効く、そういう社会を望んでいます。私達の希望を叶えるためすみやかにこの事業計画を推進されんことを私達は強く要望します。
 また、それぞれの事業内容に関しても、事業に参加し、社会復帰を目指そうと努力する当事者の意向、多様なニーズに十分対応しうる事業にして頂きたいと考えます。私たちは排除を意図した事業ではなく、また何度でも繰り返し利用できる事業を望んでいます。対策に参加する側と対策を計画、運営、監督する側との意向が違ってしまえば、対策の砕から弾き出される新たな人々の層を作るだけです。私達は今後、おのおのの事業に対する事業内容上の提言、提案を当事者の側からしていくつもりです。それを十分参考にした上でより良き事業内容の対策を推進して行く事を要望します。
 そして、今年度事業の推進だけにとどまらず、「白書」でも書かれてあるように「防止策」「就労機会の拡大」「住宅の確保」は著しく対策が遅れています。その事を十分自覚し、これらの検討課題を早期に具体的施策としてまとめあげる事、かつ都区共同の対策推進体制をより強力に推し進める事をあわせて要望します。
 また、私達の仲間は三多摩地区においても近年増加をし続けています。三多摩26市町村では対策がない事を良い事に、生活保護の窓口申請すら認めず、排除を繰り返し、区部に追い払うと云う違法かつ非人道的な対応をしています。そういった悪弊を取り除くためにも、現行の路上生活者対策の枠組みを23区内に限定するのではなく、26市町村も含め広げていただくよう是非検討をお願い致します。
 最後に、野宿者の人権を尊重し、野宿者に対する襲撃事件など二度と起こらぬような啓蒙活動を積極的に推進して頂きたいと存じます。


                                  以上

注・全都実は新宿連絡会を中心とする東京都内のホームレス団体が
東京都と交渉するために形成した実行委員会。