東京都福祉局連絡調整担当部長 殿 2002年7月3-4日
特別区人事厚生事務組合 厚生部長 殿
路上生活者対策事業運営協議会長 殿
新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議(新宿連絡会)
池袋野宿者連絡会
緊急一時保護センター・大田寮の改善を求める寮生有志
自立支援センターの改善を求める寮生有志(新宿寮、豊島寮、墨田寮)
連絡先・
090-3818-3450(笠井)
「自立への新たなシステムの構築」(いわゆるステップアップ方式による自立支援、社会復帰システム=2001年3月「ホームレス白書」)の第一ステップ施設としての緊急一時保護センター・大田寮が開設され半年を過ぎました。
緊急一時保護センター・大田寮には累計で1216名の路上生活者が入所(2002年5月末現在統計、以下同じ)し、内、自立支援センター521名、入院76名、保護施設3名、宿泊所127名、と、調査アセスメントの結果、処遇が決まり、次なるステップの施設などへ振り分けられています(74%)。
他方において、期間満了148名、規則違反退寮4名、任意、無断退寮96名など、再び路上に戻る人々(25.1%)を排出させています。
第2ステップに振り分けるアセスメント施設という位置づけにおいては、74%の人々が次なるステップに移行しており、緊急一時保護センターは外面上、十分に機能しているとの評価を与えても良いかと考えられます。けれども、私たちが緊急一時保護センター、自立支援センター利用者から聞く実態は、必ずしもこの数値を積極的に評価するものばかりではありません。
私たちは開設まもない緊急一時保護センター・大田寮に入寮した人々の不満や不安を解消するため、本年4月に大田寮施設長および東京都福祉局連絡調整担当部長、特別区人事厚生事務組合厚生部長、路上生活者対策事業運営協議会宛てに「要望書」を提出し自立支援事業の全体系をもう一度利用者の立場に立ったものとするよう提言すると同時に、大田寮内においては施設長権限で改善できる点は改善するよう寮生と施設長との話し合いを設定して来ました。結果、アセスメント調査相談の効率化、自立支援センターガイダンスの一定程度の実施が認められるに至りました。
けれどもこれらの改善は「社会復帰に向けた意欲喚起、能力向上のための支援」(路上生活者緊急一時保護事業実施要綱)にまだまだ手の届かないものでしかありません。
私たちは自立支援事業は、少なくとも野宿生活という状況、失業、半失業という状況を当人が快く思っておらず「どうにかやり直したい」と希求している人々に対して、その希望(困難の解消)をどうやって実現させて行くのか、そのためにどう支えて行けるのかが、路上における自立支援であると考えています。
その場合、野宿という困難(生活拠点の消失)を緊急避難的にでも一時的に解消するのは、最低限の支援ですが、それのみに留まっていては、新たな生活拠点の構築に到達する事ができません。一時的な施設に入ったとしても、それは確かに野宿よりはましかも知れませんが、生活拠点とは呼ばれない不安定な拠点(宿泊場所)の確保でしかないと思います。
自立支援のサービスを提供する立場の者は、支援を受けるクライアントに、今、何を支援できるのか?どこまで支援できるのか?という事を説明する義務があります。その説明を納得ないしは安心しない限り、不安定な拠点は、いつまで経っても不安定な拠点にすぎず、ステップアップの階段の踊り場にはならないと考えます。
自立支援事業と言うのであれば、実際に入り口の施設から早速、個々の目標とプログラムに沿った生活が開始されなければ、それは路上生活者の困難に対応した自立支援施策にはならないと私たちは考えます。その意味で現行の緊急一時保護センター・大田寮は、受動的な調査アセスメントや処遇決定はするものの、入寮者を自立支援事業プログラムに能動的に自ら参加さようという仕組みがあまりにもなさ過ぎます。すなわち「社会復帰に向けた意欲が喚起されていない人々」「自らの能力を認識することのない人々」「社会復帰に向け自らを守る情報を熟知していない人々」を自立支援センターなどへ送り込み、自立支援センターなどで意欲などを再び喚起させていかなくてはならないという事業における「無駄」が発生しています(結果として大田寮から自立支援センターへ「送り込まれた」人々の自立率が低迷、失敗率が高くなっていると考えます)。
私たちはこれらの弊害を改め、大田寮に入寮した人々が社会復帰に向けた目的、目標を持てるよう、そして、各人の目標に向け自らの社会復帰に向けた意欲が発揮できるよう、下記の項目の速やかな実施を求めます。
一、自立支援事業など行政支援策のガイダンス強化
1.自立支援事業全般を説明したパンフレットを入所時に配付する事
2.自立に役立つ書籍やパンフなどを娯楽室に置き、閲覧可能にする事
3.ビデオ教材などを使った社会復帰への講習会を実施する事
4.生活保護の仕組みなど、自立後に生活苦に陥った時のノウハウの講習会を実施する事
二、就労準備プログラムの導入
1.就労準備相談室の設置、就職相談員を設置する事
2.インターネットなどによる求人情報(概要)を提供する事
3.職種別求人数など職安統計などの情報を提供する事
4.自立支援センターの就労活動状況や職業内訳などの情報を提供する事
5.常雇就労希望者への面接訓練会を実施する事
6.身体馴らしのため施設周辺や大田市場の一斉清掃など地域ボランティア活動を実施する事
7.身体馴らしのため施設内の植栽作業や動物の飼育、管理ボランティア活動を実施する事
三、住込み就労支援プログラムの導入
1.専門就職相談室の設置、就職相談員を配置する事
2.新聞、求人誌など閲覧室を設置する事
3.求職活動のための無料電話を設置する事
4.求職活動のための交通費を支給する事
5.求職活動のための衣類貸与する事
6.就職決定者への支度金を支給する事
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