ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(素案)に関する
パブリックコ メント

東京都における実施計画の基本は、自立支援を中心にホームレスの人たちが地域 で生活することを支援するものです。計画は現在の「ホームレス」の状況を支援 するものではありません。保健・医療における実施計画内容は、そのヘルスポリ シーに基づいた課題として疾患の早期発見、早期治療に重点をおいています。し かし、都内保健所が行う事業の基本計画となるには、具体性に乏しい内容です。 このままでは保健・医療分野の課題達成の遅れが心配されます。現在、都内市区 町村では、独自の施策の充実を待てない状況にあり、実施計画を事業の基本にお きたいと考えています。よって保健・医療分野での実施計画内容の役割は大き く、市区町村の今後の取り組みを推進する力を持っています。以上のことから実 施計画全体を「ホームレス」の状況を脱するための施策ととらえ、保健・医療に ついて補足的に提案いたします。

(4)保健及び医療の確保

1健康診断・相談サービスの提供

「現状と課題」では、「衛生状態の悪化」や「栄養状態が充分でない」ことから の「健康状態の悪化」をとりあげていますが、衛生状態改善の取り組みが明らか になっていません。「ホームレス」の状況は清潔でいることあ困難な状況です。 清潔は、病院受診や就職活動等社会に関わってゆくために欠かせない条件であ り、清潔ではない身なりは、受診時の差別の対象となります。よって、「課題に 対する取り組み」の中に以下のことを提案いたします。

○区内福祉事務所の生活・受診相談の場にシャワールーム・着替え提供の場を常 設する。

○シャワールームが設置できない場合は、入浴券を提供する。 清潔関連の支援を「保健及び医療の確保」に加えることで、福祉事務所と保健所 がより緊密に連携をとることが期待でき、「結核」「疥癬」など感染症に対する ケアだけでなく、精神疾患の対応も充実します。

2結核罹患者への対応

「現状と課題」で言われているように「ホームレス」の状況と、結核の発生は放 置できない問題です。結核患者の早期発見と治療中断・再発の防止は最優先の保 健活動といえます。 「課題に対する取り組み」は、結核検診において受診者数の向上を図る・結核検 診の場では、自立支援制度に案内し、「ホームレス」状況を脱するための啓発活 動を行う・結核治療開始とともに生活保護を実施することで、患者は安心して治 療を完了できる・治療完了後も二度と「ホームレス」にならないように支援を継 続することが必要です。以上によって、「ホームレス」の人は、結核の早期発 見・早期治療とともに悪環境での結核再発を防ぐことができます。これらを踏ま えて以下のことを提案いたします。

○結核検診には必ず、生活相談や自立支援事業のわかりやすい説明や利用受付の 場を設ける。

○結核検診においても食事や入浴券・着替えといった実際的なインセンティブを 提供し結核検診利用者を増やす。

○結核治療開始とともに生活保護の利用を開始し、結核治療完了後も保護の廃止 をせず地域での生活を支援する。

期待される結果としては、結核の早期発見・早期治療および再発防止ばかりでな く、実施計画の根幹である「ホームレス」の人の減少を保健・医療の立場で支え ることができます。

最後に、都区共同の自立支援事業および他の支援施策を持つ23区に比べ、支 援の進んでいない三多摩地域の「ホームレス」の人たちへの支援格差は解消すべ き課題と考えますが、実施計画の中では明確になっていません。医療・福祉で構 成されたアウトリーチチームによる巡回相談を提案します。この巡回相談が実現 することにより、結核その他の健康上の問題の早期発見・早期対応と福祉支援が 容易となります。また、三多摩地区の「ホームレス」の人たちの対応システムが 東京都健康局を中心に保健・医療分野から作られることは、これまでになかった 画期的なものと考えます。                              

2004年7月4日

新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議(新宿連絡会)・医療班