平素から路上生活者対策の推進にご尽力頂き感謝しております。
今後とも、より多くの路上生活者達が路上から脱却できかつ自立生活が送れるよう、「ホームレス自立支援法」に基づく諸施策の前進、拡大及び拡充を私たちは強く望んでいます。
さて、3月23日特別区厚生部会の決定により「路上生活者巡回相談事業」が正式に確定し、それに伴いこの事業を円滑に実施するため「ブロック別協議会」が設置され、更に「ブロックセンター」たる緊急一時保護センター千代田寮にこの事業の手足となる巡回相談主任および相談員が既に配置されたと私たちは聞き及んでおります。
これまで福祉事務所や緊急一時保護センター、また自立支援センターに引きこもり、路上生活者の実態把握については、数は東京都福祉保健局が例年実施している「昼間のみ」「国管轄地域を除いた」まさに「概数」でしかなく、実態を反映していないとの指摘がなされている「概数調査」にのみ依拠し、またニーズ等の把握については平成15年2月と云えば既に3年も前に国が実施した古い「全国調査」にのみ依拠し、変動する路上の現場に決して赴く事なく都区合意で決められた路上生活者対策事業をただ機械的に実施して来た特別区サイドの反省の上に今回新たに巡回相談センターが設立されたのであれば私たちはおおいにこの新たな事業を評価するものであります。
私たちは12年間と云う長い期間に亘り、民間でのアウトリーチ活動(私たちはパトロールと呼んでいます)を昼夜欠かさず新宿の地で実施して来ました。また、新宿のみならず東京駅、銀座、日比谷公園、新橋駅等、第一ブロック管轄内の路上生活者集住地域へのアウトリーチも折を見ながら実施をして来ました。そしてその都度、それぞれの地域の実数の調査、またニーズ把握、個別相談、そして各福祉事務所情報の提供と橋渡しを行ってきたつもりです。その結果、多くの路上生活者と出会い、信頼関係を作り今日に至っております。
私たちのような民間の取り組みを評価し、そのノウハウを学び、他方において民間団体の力が及ばない地域で官主導の形での新たなアウトリーチ事業を行うと云う構想であれば、私たちはそれに惜しみない協力をした事でしょう。
しかし、現在設置されている巡回相談センターについて云えば、前述したこれまでの事業の在り方の反省と云う言葉はどこにもなく、また民間団体の長年に亘る努力に対しての評価もどこにもなく、また民間団体への相談もなく、更に当事者である路上生活者の声も聞かず、密室の中で「巡回相談」がいつの間にか決定され、いつの間にか実施されてしまっている感が拭えません。
そこで、まず問いたいと思います。「巡回相談センター」とは一体何をやる機関なのか?と。
路上生活者の意思を無視して追い立てを図る「相談」と云う名の「人さらい事業」なのか?それとも単なる「情報提供事業」なのか?それとも弱っている人々を助ける生活保護者の「掘り起こし事業」なのか?それとも単なる「人生相談事業」なのか?
私たちは、まずこの点を明確にしてもらいたいと考えます。
路上生活者を「利用」しようと様々な人種が路上生活者に声をかけ「相談」に回っているのも、路上の一方での現実でもあります。「福祉を取らせてあげる」と声をかけるヤクザ者も後を断ちません。
役所だから信用されると思ったら大間違いで、道路管理者や公園管理者は役所の看板を背負って追い立ての「相談」に回っています。口だけの「相談」なんて誰にでも出来ます。個別具体的な人と人との信頼関係があってはじめて「相談」が成立し、解決策が見いだされると考えるのが普通だと私たちは考えています。
巡回相談センターが「何者」なのか「何を目的」としているのかが判然としていない状況で「巡回」をさせたとしたら路上生活者から一蹴されるのは目に見えています。
そういう前提を無視して「巡回相談業務計画」なるものを形だけ作り、施設しか管理したことのないブロックセンター長に責任を押しつけ、なおかつ何も知らされず、経験もない巡回相談員をただ路上に放置し、この事業が実施されるとすれば、路上生活者対策史上最悪の事業との烙印が押される事は間違いがないでしょう。
それでは一体どうすれば良いのか?答えは簡単です。見切り発車などをせずに考え直し、議論をオープンにするのが一番です。
そのため私たちは下記の事項を要望します。また、本要事項に基づく話し合いを強く要望致します。